[12月の庭園仕事]
今年の秋の訪れは穏やかです。台風の訪れも少なかったですね。これからだんだん寒くなってきて霜が降りるようになりますので、耐寒性のない植物は室内に取り込むなど、早めに対応しましょう。
【特集1】買い物情報
●アルテミシア‘パルファム・ドゥ・エチオピア’(Artemisia sp.)
キク科の常緑多年草です。シロタエギクよりも細葉で、少し触っただけでも強くアップルミントのような香りが広がります。落ち着いたたたずまいでホワイトガーデンや寄せ植えに使用することができます。耐寒性はありますが、霜のあたらないところで管理しましょう。
▲アルテミシア
葉が細かく、ボリュームのある姿。
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▲アルテミシア葉先
ヨモギ属らしい形の葉。 |
●ゴンフォスティグマ(Gomphostigma virgatum)
アフリカ南部に分布するフジウツギ科の常緑低木です。暑さ寒さに大変強く、一年中シルバーリーフを楽しめます。初夏から秋に開花し、花後の剪定で枝数を増やすことができます。
▲ゴンフォスティグマ
白いローズマリーのような姿。
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▲ゴンフォスティグマ葉先
ごく短い白い毛がついています。
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●ホワイトソルトブッシュ(Rhagdia hastata)
オーストラリア原産のヒユ科の常緑低木です。ラゴディア・ハスタータの学名や、ホワイトソルトブッシュの英名で販売されています。暑さ寒さに強く、日陰にも比較的耐えられ、霜にも耐えます。寒さに当たると枝元の白い葉が赤くなります。水は乾いてからたっぷりと与えます。茎が放射状によく伸びるので、剪定をして樹形を維持します。
▲ホワイトソルトブッシュ
放射状に広がる枝。 |
▲ホワイトソルトブッシュ葉
枝元が紅葉します。 |
●ツリージャーマンダー(Teucrium fruticans)
南ヨーロッパ原産のシソ科の低木です。テウクリウムという学名で出回っている場合があります。銀白色の枝葉に薄い青色の花が咲きます。花の形から、「クリオネ」と呼ばれることもあります。日当たりがよく、水はけのよい乾燥した地を好みますので、ロックガーデンに最適です。横に広がっていくのでグラウンドカバーなどにも使えます。
▲ツリージャーマンダー
葉に隠れるように花が咲きます。 |
▲ツリージャーマンダーの花
クリオネにみえます。 |
●サルビア・アルゲンティア‘白クマ君’(Salvia argentia)
地中海地方原産の、シソ科の多年草です。よく花壇でみかける、赤や青の花を観賞するサルビアの仲間ですが、こちらは葉を観賞します。白クマ君、という名で売られるように、茎や葉にふわふわの柔毛をもち、触ると厚いフェルトのような感覚があります。シルバーリーフとしてコンテナや花壇のアクセントになります。
水はけと日当たりの良いところで育てます。多湿を嫌うので、梅雨時や夏は雨よけをつけるか、軒下に置くなど雨に当らないようにします。
▲サルビア・アルゲンティア
新芽であるほど真っ白い柔毛に覆われてモコモコしています。 |
●ヘリクリサム‘ルビークラスター’(Helichrysum ‘Ruby Cluster’)
南アフリカ原産の、キク科の多年草です。シルバーリーフの枝先の中に赤く光る蕾をつけます。見事な光沢で、みとれてしまいます。
日本の高温多湿が苦手ですが、-10℃くらいまで耐寒性があるので、日当たりと水はけのよい花壇やコンテナに利用できます。花茎が上がってきますので、花が終わったら花茎は切り戻します。水遣りは、土が乾いたらたっぷりと与えます。
▲‘ルビークラスター’
シルバーリーフとして楽しめます。 |
▲枝先の奥を覗き込むと、
光る蕾があります。 |
【特集2】季節の手入れポイント
<花壇・ガーデニング>
冬花壇の草花の生育はいかがですか。パンジーやビオラ、デージー、ハボタンは耐寒性が強いので、根付いてしまえば多少霜が降りても大丈夫ですが、スイ―トアリッサムやクリサンセマム・ムルチコーレはやや寒さに弱いので、霜よけや風除けを作るか、軒下に移すのが無難です。ユリやスイセンの球根を植えていない場合は、早めに植えましょう。
<花木・庭木>
マツ類の“もみ上げ(古葉とり)”は早めに済ませて、正月をきれいな庭で迎えましょう。また、チャボヒバ、イトヒバ、スイリュウヒバなどのヒバ類も庭の格を高めてくれる樹木です。一緒に手入れをすれば、庭がより見事になります。
モミジ・カエデ類の剪定も早めに行う作業です。根の活動が早く樹液の流れが早いので、できたら年内、遅くても1月いっぱいくらいにすませておきます。太枝を切るときは、枝の根元から切り、切口にはツギロウやトップジンMペーストなどの癒合剤を塗るとよいでしょう。
<花鉢物>
これからしばらくは、外の園芸はあまり楽しめなくなり、室内園芸が中心になります。定番のシクラメンにプリムラ類、花期の長いシンビジウムやデンドロビウムなどの洋ラン類、クリスマスに欠かせないポインセチアやクリスマスカクタス(シャコバサボテン)、クリスマスベゴニアなどが豊富に出回っています。良質の株を入手することが、鉢物を長持ちさせる秘訣です。お店に入荷された直後の、ダメージを受けていない鉢を選びましょう。
お正月にはやはり、和風の鉢物がふさわしいですね。月半ばになるとお正月用の松竹梅や七草の寄せ植え、梅、放春花(ボケ)、福寿草の鉢植えが出回ります。ウメやボケはつぼみが乾燥すると花が咲かなくなりますので、乾燥しない戸外で管理するか、室内管理の場合は、夕方に霧吹きでサッとひと吹きし、朝まで頭からビニール袋などをかぶせておくとよいでしょう。
<家庭菜園・ハーブ>
菜園やハーブガーデンも冬支度です。夏秋まきのネギやニンジン、タカナ、カラシナなどの収穫時期です。あまった野菜類は土寄せをすれば、しばらく保てます。また、ホウレンソウやコマツナなどには霜よけをつくってやりましょう。
地上部が枯れてきたハーブ類は株元で切り取り、根元を腐葉土や堆肥でマルチングしておきます。まだ取り入れていない非耐寒性のハーブがあれば、早めに室内や温室などに取り入れます。
【特集3】クリスマスの花鉢物の手入れ
冬の室内を暖かく飾ってくれる鉢物類が盛りになっています。鉢物を購入するときは、なるべく商品の回転の早いお店で、入荷したてのものを選びましょう。お店に長く置いてあったものや、店外の吹きさらしの場所に置いてあったものなどは、傷んでいることがありますので注意しましょう。一度傷むと、回復させるのはなかなか困難です。早めに入手した鉢物はそろそろ液肥を施す時期です。また、咲き終わった花がらは、まめに摘み、株の負担を少なくしてあげましょう。
シクラメン
入手して花が咲き進んできたら、葉組みをしましょう。花茎を真中に集め、替わりに大きな葉を外側に持ってきます。そうすると光が中にまで入るようになり、花が途切れなく咲き続けてくれます。枯れた花や黄色くなった葉は、強引に引っ張って抜かず、しおれて抜けるようになってから指で軽くねじって摘み取りましょう。夜間温度6、7℃くらいのところがベストです。
クリスマスベゴニア
春まで長く咲き続けてくれる種類です。花がらをこまめに摘み、液肥を2週間に1回ほど与えます。エラチオールベゴニア(リーガースベゴニア)も同様です。ベゴニア類は、高めの温度(夜間温度12、3℃)を好みますので、やや暖かい部屋に置きましょう。
クリスマスカクタス
空気が乾燥すると蕾が落ちやすいですから、霧吹きをこまめにするか、夜だけポリ袋を頭からかぶせて鉢元を軽く縛っておくとよいでしょう。1季咲きですから肥料は必要ありません。
ポインセチア
過湿にすると根が傷み、下葉から枯れてきますので、水やりは鉢土が白く乾いてきて葉が少ししおれかけてきてから与えるようにします。また、水を与えた日の夜は14、5℃が保てる部屋に移すようにします。肥料は必要ありません。
クリスマスローズ
この時期に咲くヘレボルス・ニゲル(本来のクリスマスローズ)と、本来は春咲きのヘレボルス・オリエンタリス(レンテンローズ)とその交配種が出回り始めています。耐寒性が強いので、露地で栽培できます。なお市販株は根の大きさのわりに、ポットが小さいことが多いですから、入手したら一回り大きな鉢に植え替えましょう。
プリムラ類
オブコニカはシクラメンと同じ葉組みをしましょう。ポリアンサは、葉の裏から花が上がることがありますから、花を真中に集めるようにし、終わった花は先の細いハサミで柄の下のほうから切り取ります。また、オブコニカやマラコイデスで花茎が多く上がってきたら、先に咲いた茎から切り取って切花にして楽しむようにすると、次から次に花が咲きつづけてくれます。
シンビジウム
花は咲き進むまではよく日に当てるようにします。蕾が全部開いたら場所を移してもよいでしょう。この段階で切花にすると、株の回復が早くなります。また、しおれた花は1つずつこまめに摘み取りましょう。
【特集4】落葉果樹・庭木の植えつけ
落葉の果樹や花木・庭木の植えつけは、葉が落ち休眠に入った今の時期が好期です(12月いっぱいまで)。寒さが早く来る地方は、春に入る直前くらいが好機になります。
<植えられる種類>
ウメモドキ、オオデマリ、ガマズミ類、モクレン・コブシ類、カエデ、ボケ、カイドウ、サクラ類、果樹ではウメ、モモ、リンゴ、ナシ、クリ、カキ、ブドウなどが植え時です。
<よい庭木の条件>
- 木の形のよいもの
- 枝が四方に伸びているもの
- 幹肌が生き生きしているもの
- 根鉢がある程度大きく、細根が多数ついているもの
- 太い根を切った痕がないもの
<植木の植え方>
- 根鉢よりも大きめの植え穴を掘る(深さは根鉢の高さよりも深く)。
- 底に堆肥を入れ(苗木の場合は化成肥料も少量を入れる)少し土を戻す。
- 根元が地面の高さよりも多少高くなる程度で植木をすえる。
- 土を8分目くらい入れて、水をたっぷりと注ぐ。
- 根鉢を棒で突き、土を根の周りに行き渡らせる。
- 土を元の高さまで戻す。
- 植え穴の周囲に丸く土手状に土を盛って(水鉢)、その中にもう一度水を十分に注ぐ。
この方法は水極めといい、マツ類やナンテンなどは水を使わない植え方をします(土極め)。
なお、1本立ての果樹苗は、幹を切り詰めて植えつけます。
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