日本園芸協会 日本園芸協会

 園芸ファン通信 VOL.69

ここ数年、季節の移り変わりがこれまでと違ってきているような気がします。
今年も、爽やかな初夏の陽気がほとんどなくて、いきなり梅雨に入ってしまったような感じで異常に雨が多かったですね。
雨が多くて湿度が高いと、草花類は徒長しやすく病気が蔓延しがちです。薬剤散布や枝抜きをこまめにおこないましょう。

■夏に涼しげな鉢物の紹介

蒸し暑い季節は、涼しさを演出してくれる鉢物がよいですね。
今回は新しく出回り始めた種類の紹介と、その管理を中心に説明します。

●マルバストルム・ラティリティウム(アオイ科) Malvastrum lateritium
南アメリカ原産の這性の多年草で、行灯(あんどん)仕立ての鉢物が出回っています。
吊鉢やグラウンドカバーにしてもよいでしょう。栽培は排水のよい用土に植えて日光によく当てること。
水やりは過湿に注意。耐寒性は比較的ありますが、強い霜や寒風の当たるところは避けます。


★マルバストルム・ラティリティウム
伸びたつるは行灯に誘引する。

★レックスベゴニア
小鉢植えのものは、すぐに植え替えた方がよい。

●レックスベゴニア(シュウカイドウ科)
最近、ベゴニア類がひそかなブームになっているようです。
なかでもこのレックスベゴニアは鮮やかな葉色と模様から人気がでています。
夏の間は、半日陰の風通りのよいところにおき、ハダニ予防のため、葉水(やシリンジ)を行います。
水やりは、やりすぎに注意し、肥料は春と秋に月に1回固形肥料を与えればよいでしょう。
根詰まりさせると、葉が痛んだり小さくなりますので、新しく購入した鉢は、根鉢を崩さないように一回り大きな鉢に植え替えるのが安全です。冬は明るい室内に取り込みます。



■花木の手入れ

梅雨に入ると、庭に咲く花も一段落ですね。
これから夏に咲いてくれる花や、また咲き終わった花の手入れをしましょう。


○夏咲きの花木
キョウチクトウやキンシバイ、アベリア類、ムクゲ、フヨウ、ザクロなどは、今年伸びた枝先に花を咲かせますので、この時期に枝先を切るのは禁物。花がらだけ摘み取るようにしましょう。

○モクセイ類
茂りすぎてうるさいからといって、今の時期に枝先を刈り込むと、秋の花が咲かなくなります(刈り込みの適期は3、4月)。特に込みすぎたところだけ、8、9月に枝を抜くようにします。

○ライラック
剪定をせず、自然樹形で育てる種類です。背が高くなりすぎた場合は、花後に、長く伸びすぎた枝を元から切り取って、樹形を整えます。徒長枝や台芽(台木から伸びる芽)は早めにかき取ります。

○オオデマリ
アジサイに似た大きな花をつけるオオデマリや香りのよいチョウジガマズミなどガマズミ類の人気が高くなっているようです。この仲間は、新しく伸びた枝の先端に花をつけますので、花がらは摘んでも、枝先は切らないようにします。古い枝は花付きが悪いので、冬の間に間引くようにします。

○ハイドランジア
鉢植えで花を早く咲かせたハイドランジアは、枝を切り込みます。花を咲かせた枝は元から、今年伸びた枝は2、3節残して切り詰めればよいでしょう。併せて、鉢替えもおこないます。根鉢を半分ほど崩して根を切り詰め、一回り大きな鉢に植え替えます。

○サツキ
常緑性のツツジでは最も花が遅い種類です。花が終わったらすぐに刈りこみましょう。ただし、あまり強く刈りこみますと、翌年の花付きが悪くなりますので、刈りこみは去年の枝の元ぐらいにとどめます。


■カキのヘタムシと草花のエカキムシ

<カキのヘタムシ>
カキの果実が大きくなり始めた初期に落ちてしまうのは、ヘタムシ(カキミガの幼虫)が果実のヘタから侵入して中を食い荒らしたせいです。このヘタムシは5月下旬〜6月と8月の2回発生します。 対策としては、今の時期に1週間おきに2、3回、スミチオン乳剤を散布します。併せてトップジンM水和剤を混合散布すれば炭そ病などの予防もできて、効果的です。

<エカキムシ>
ナスターチウムやレモンバーム、ペチュニアなどの葉に、絵を描いているかのように白い線が入っているのは、エカキムシ(ハモグリバエ類の幼虫)の被害です。被害のひどい葉は摘み取って処分し、スミチオンかオルトラン乳剤を1週間おきに2、3回散布するようにしましょう。被害が大きい場合は黄色の粘着テープ(ハエ取り紙みたいなもの)を低い位置で設置すると、効果があります。粘着テープは大きな農協などで販売しているはずです。を そのほかの花木や庭木、草花類も注意してみましょう。アブラムシが発生していたら、オルトラン、アドマイヤーなどの浸透移行性殺虫剤を散布しましょう。効果は約3週間続きますので、月に2回散布すれば万全です。


■ジャーマンアイリス、ハナショウブの株分け

アヤメ類は花後に株分けします。特に夏の暑さに弱いジャーマンアイリスでは、株が茂り過ぎないように、2、3年に1回は花後に株分けをして、通風と土の水はけを図るようにしましょう。

<ジャーマンアイリスの株分け>
(1)株を掘り起こす
(2)今年花が咲いた根茎(イモ)の脇から、出た新しい芽のついた根茎を切り取る。この根茎には根が余りついていなくてもかまわない。
(3)その根茎の葉を1/3ほど切り詰める。
(4)植え場所は、今まで、ジャーマンアイリスを含めアヤメ類が植わっていなかったところ。
(5)土はやや砂がちの水はけのよいものがよく、苦土石灰を1掴み混ぜこんでおく。
(6)植え方は、深植えにせず、根茎の上部が土の上に出る程度の浅植え。
(7)たっぷりと水やりする(その後の水やりは不要。肥料も不要)


★ジャーマンアイリス「レア・トレート」

★ハナショウブ「万寿楽」

<ハナショウブの株分け>
(1)株分けの時期は花が終わってから(7月上旬くらいまでに)。
(2)株を取り出し、土を落とす。
(3)今年咲いた茎を元から切り取り、根茎を縦に切り分ける。
(4)それぞれ2芽くらい新芽がつくように根茎を分割する。
(5)新芽の葉を1/2くらい切り詰める。
(6)植え方は深植えにならないように気をつけ、浅植えにする。
(7)鉢植えの場合は、7号鉢に1株(2芽で)。


■季節の手入れポイント

<花壇・ガーデニング>
梅雨に入ると、外に出る機会も少なくなりますね。花壇では、アブラムシやヨトウムシ類などの害虫類、うどんこ病や灰色かび病などの病気が多い時期ですから、雨がやんだときは見回りが欠かせません。雨が続きそうで、薬剤をまけないときは、害虫類は手や箸などでつまんで退治し、病気では、病班などが広がっている葉を摘み取るだけでも効果があります。

<花木・庭木>
春に伸び出した芽の勢いが止まる時期で、常緑樹などでは、移植や植付けができます。庭の模様替えを考えられている方は、今月中に行ないましょう。また、ツバキ・サザンカ、サツキ・ツツジ類、ジンチョウゲ、キャラボク、スギなど多くの種類の挿し木の適期です。いろいろとチャレンジしましょう。

ニチニチソウはやや寒さに弱いので、定植は遅霜の恐れがなくなってから
★アニゴザンツス
夏に枯れやすいので、半日陰のなるべく涼しい所で。

<花鉢物>
近年、ライスフラワー(ヘリクリスム・ディオスミホリウム)、アニゴザンツス、レシュノールティア(初恋草)、ボロニア、ホワイトツリー、サザンクロス、スカエボラなどオーストラリアや南アフリカ原産の鉢物が目立ちます。これらの植物は、もともと乾燥気味のところの原産ですから、高温多湿を嫌い、長雨に当てると、過湿になって根腐れを起こしがちです。これからの雨の多い時期は、軒下などに置き、雨が当たらないようにしてやりましょう。

ニチニチソウはやや寒さに弱いので、定植は遅霜の恐れがなくなってから
★ライスフラワー
花後に半分くらいに切り詰め、一回り大きい鉢に移す。

<家庭菜園・ハーブ>
今年は雨が多いので、家庭菜園の野菜苗も徒長しがちですね。湿度が高いと発生が多いのがうどんこ病。発生の初期ならば病気のでた葉を中心に数枚摘み取ればよいのですが、病気が広がったら、ベンレートなどの殺菌剤の散布が必要になります。また、キュウリやナスなどの高温性の果菜類は生育が遅れていますので、最初の2、3果は熟させずに若もぎして、株の充実を図るようにしましょう。  なお、ニガウリ、オクラ、夏キュウリ(ポット苗)の植え付け、エンツァイやモロヘイヤ、ツルムラサキなどの種子まき時期です。



他にも、日本園芸協会のホームページには役立つ園芸情報をたくさん掲載していま す。
毎月の植物の手入れ方法をご紹介する「季節の園芸作業」はこちらから。

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植物に関するいろいろな情報を満載したサイト「植物博物館」です。
植物を鑑賞したり、図鑑のように調べたり、様々な情報を無料で得ることができます。

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