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 園芸ファン通信 VOL.80 【6月号】

暖冬の年は、夏はそれほど暑くないことがあるのですが、今年は、5月なのに猛暑日もでています。
今年は猛暑を覚悟しておいたほうがよいのかもしれませんね。
夏の園芸も、あらかじめ暑さを計算に入れておきましょう

【1】これから夏の間、長く咲いてくれる夏向きの草花
・・・インパチエンス、にチニチソウ、ポーチュラカ


【2】今の手入れで咲き方が違う
・・・上手に咲かせる花木の手入れ


【3】厄介な害虫を駆除する
・・・カキのヘタムシと草花のエカキムシの対策


【4】来年も見事な花を咲かせるハナショウブ、ジャーマンアイリスの花後の植え替え

【5】季節の手入れポイント
・・・花壇・ガーデニング、花木・庭木、花鉢物、家庭菜園・ハーブ


夏向きの草花類
■高温に耐えて夏の間、長く咲いてくれる

暑い夏に長く咲き続けてくれる貴重な草花類を紹介します。

ポーチュラカの吊り鉢 混みすぎたところの枝を挿し芽すればすぐに発根する。●ポーチュラカ(スベリヒユ科)
熱帯アメリカ原産といわれる耐暑性の強い宿根草。
強健で高温・乾燥に強く、日当たりで元気よく育ってくれます。
肥料は月1回固形肥料を小量施せばよいでしょう。
ただ、寒さには弱いので、秋早めに挿し芽で苗を作って室内で越冬させます。

花壇植えもできるアフリカホウセンカ(写真は八重咲き品種)
半日陰が適するニューギニアインパチエンス
●インパチエンス(ツリフネソウ科)
小型で日当たりにも耐えるアフリカホウセンカと、大型で半日陰向きのニューギニアインパチエンスがあります。どちらも、水切れに弱いので、注意しましょう。
アフリカホウセンカは花壇植えもでき、八重咲き品種も出回っています。ニューギニアインパチエンスはやや高温に弱い面がありますので、通風のよい場所に置きます。
肥料は8月を除き月1回固形肥料を小量施せばよいでしょう。

●ニチニチソウ(キョウチクトウ科)
マダガスカル原産の多年草ですが、寒さに弱いので、園芸上は一年草扱いされています。日当たりと乾燥を好み、痩せ地にも耐えます。最近は、花が小型のもの、花がスパイラルになるものや、パステル調の花色のものなど品種が多くなりました。肥料は月1回固形肥料を小量施せばよいでしょう。

花径45mmになる大輪のニチニチソウ
ニチニチソウの矮性品種フェアリースター(花径15mm)花がスパイラルするニチニチソウの品種トルネード(花径20mm)

花をいっぱい咲かせる手入れをしましょう
■花木の手入れ

そろそろ庭の花木類も一休みの時期です。
これから夏秋に咲いてくれる花や、また咲き終わった花の手入れをしましょう。


咲きだしが薄桃色で美しい桃色ヒメシャラ

●夏咲きの花木
キョウチクトウやキンシバイ、アベリア類、ムクゲ、フヨウ、ザクロなどは、今年伸びた枝先に花を咲かせますので、この時期に枝先を切るのは禁物。込みすぎたところの枝を抜く程度にしましょう。


●モクセイ類
茂りすぎてうるさいからといって、今の時期に枝先を刈り込むと、秋に花が咲かなくなります(刈り込みの適期は3、4月)。特に込みすぎたところだけ、8、9月に枝を抜くようにします。


●ナツツバキ・ヒメシャラ
花が終わったら花がらを摘みます。基本的に自然樹形で育てますので、夏場は徒長枝の切り詰めにとどめ、落葉後に混みすぎたところを間引きます。


●ライラック
剪定をせず、自然樹形で育てる種類です。背が高くなりすぎた場合は、花後に、長く伸びすぎた枝を元から切り取って、樹形を整えます。徒長枝や台芽(台木から伸びる芽)は早めにかき取ります。


●オオデマリ
アジサイに似た大きな花をつけるオオデマリや香りのよいチョウジガマズミなどガマズミ類の人気が高くなっているようです。この仲間は、新しく伸びた枝の先端に花をつけますので、花がらは摘んでも、枝先は切らないようにします。古い枝は花付きが悪いので、冬の間に間引くようにします。


●サツキ
常緑性のツツジでは最も花が遅い種類です。花が終わったらすぐに刈りこみましょう。ただし、あまり強く刈りこみますと、翌年の花付きが悪くなりますので、刈りこみは去年の枝の元ぐらいにとどめます。

早期発見早期駆除を心がける
■病害虫の防除

これから雨が多くなるにつれ庭に出ることも少なくなります。病害虫が発生しても見逃してしまうこともでてきます。
病害虫対策は、病気は予防、害虫は早期駆除が原則ですから、注意しましょう。


チャドクガは集団になっている幼生期に退治する
●ケムシ類
チャドクガが盛りになります。なるべく早めに見つけて、群生しているときに退治しましょう。
葉ごと切り取って始末するか、スミチオンなどの殺虫剤を散布します。
葉裏の卵の痕や脱皮殻もきれいに整理しましょう。
サクラやウメ、ハナミズキ、プラタナスなど多くの樹種にアメリカシロヒトリ、ウメケムシなどのケムシ類が、針葉樹でもマツカレハなどのケムシ類が発生します。
なるべく発生の初期に発見してスミチオンやディプテレックス乳剤などを散布して退治しましょう。

●カキのヘタムシ
カキの果実が大きくなり始めた初期に落ちてしまうのは、ヘタムシ(カキミガの幼虫)が果実のヘタから侵入して中を食い荒らしたせいです。
このヘタムシは5月下旬〜6月と8月の2回発生します。
対策としては、今の時期に1週間おきに2、3回、スミチオン乳剤を散布します。
併せてトップジンM水和剤を混合散布すれば炭そ病などの予防もできて、効果的です。

●エカキムシ
ナスターチウムやレモンバーム、ペチュニアなどの葉に、絵を描いているかのように白い線が入っているのは、エカキムシ(ハムグリバエ類の幼虫)の被害です。
被害のひどい葉は摘み取って処分し、スミチオンかオルトラン乳剤を1週間おきに2、3回散布するようにしましょう。
被害が大きい場合は黄色の粘着テープ(ハエ取り紙みたいなもの)を低い位置で設置すると、効果があります。
粘着テープの入手についてはお近くの農協に問い合わせて見てください。

●アブラムシ
枝葉が茂ってくると、アブラムシの発生も多くなります。
発生したらエカトンやオルトランなどの浸透性殺虫剤を散布しましょう。
効果は2週間続きますので、月に2回散布すれば万全です。

■シャーマンアイリス、ハナショウブの株分け
花後が株分け・植替えの適期

アヤメ類は花後に株分けをしましょう。特に夏の暑さに弱いジャーマンアイリスでは、株が茂り過ぎないように、2、3年に1回は花後に株分けをして、通風と土の水はけを図るようにします。

花色豊富で、虹の花といわれるジャーマンアイリス

<ジャーマンアイリスの株分け> 
(1)株を掘り起こす  
(2)今年花が咲いた根茎(イモ)の脇から出た新しい芽のついた根茎を切り取る。この根茎には根が余りついていなくてもかまわない。  
(3)その根茎の葉を1/3ほど切り詰める。
(4)植え場所は、今まで、ジャーマンアイリスを含めアヤメ類が植わっていなかったところ。  
(5)土はやや砂がちの水はけのよいものがよく、苦土石灰を1掴み混ぜこんでおく。  
(6)植え方は、深植えにせず、根茎の上部が土の上に出る程度の浅植え。  
(7)たっぷりと水やりする(その後の水やりは不要。肥料も不要)

<ハナショウブの株分け> 
(1)株分けの時期は花が終わってから(7月上旬くらいまでに)。
(2)株を取り出し、土を落とす。
(3)今年咲いた茎を元から切り取り、根茎を縦に切り分ける。
(4)それぞれ2芽くらい新芽がつくように根茎を分割する。
(5)新芽の葉を1/2くらい切り詰める。
(6)植え方は深植えにならないように気をつけ、浅植えにする。
(7)鉢植えの場合は、7号鉢に1株(2芽で)。

■季節の手入れポイント
花壇・ガーデニング、花木・庭木、花鉢物、家庭菜園・ハーブ

<花壇・ガーデニング>
そろそろ入梅を迎える地方も出てきます。梅雨に入ると、外に出る機会も少なくなりますね。花壇では、アブラムシやヨトウムシ類などの害虫類、うどんこ病や灰色かび病などの病気が多い時期ですから、雨がやんだときは見回りが欠かせません。雨が続きそうで、薬剤を撒けないときは、害虫類は手や箸などでつまんで退治し、病気が広がっている葉は摘み取るだけでも、効果があります。

<花木・庭木>
春に伸び出した芽の勢いが止まる時期で、常緑樹などでは、移植や植付けができます。庭の模様替えを考えられている方は、今月中に行ないましょう。また、挿し木の適期ですから、いろいろとチャレンジしましょう。

<花鉢物>
春に入手したレケナウルティア(初恋草)、ボロニア、ホワイトツリー、エリカ、クリアンツス、グレビレア、サザンクロス、スカエボラなどオーストラリアや南アフリカ原産の鉢物は、これからが栽培の難所になります。もともと乾燥気味のところの原産ですから、高温多湿を嫌い、長雨に当てると、過湿になって根腐れを起こしがちです。これからの雨の多い時期は、軒下などに置き、雨が当たらないようにしてやりましょう。

<家庭菜園・ハーブ>
そろそろ、早めに植えたキュウリやナス、ピーマン、トマトなど果菜類の収穫が始まるころです。ただ、最初の2、3果は熟させずに若もぎしてやると、株の負担を少なくなり、その後の生育が順調で、収穫が多く楽しめるようになります。  植えつけはニガウリ、オクラ、夏キュウリ(ポット苗)、種子では、エンツァイやモロヘイヤ、ツルムラサキなど暖地性種がまき時です。



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