日本園芸協会
園芸ファン通信 VOL.87 【1月号】
新年、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 昨年は記録的な暖冬、一昨年は逆に厳冬・大雪でした。さて今年の冬はどうなのでしょうか。ちなみに日本各地の最低気温(記録日)を調べました。
旭川 ―41.0℃(1902.1.25)    札幌 ―23.9℃(1945.1.18)    仙台 ―11.7℃(1945.1.26)    
新潟 ―13.0℃(1942.2.12)    東京 ―9.2℃(1876.1.13)      長野 ―17.0℃(1934.1.24)    
名古屋 ―10.3℃(1927.1.24) 大阪 ―5.5℃(1981.2.27)    鳥取 ―7.4℃(1981.2.26)
高松 ―7.7℃(1945.1.28)     福岡 ―8.2℃(1919.2.5)     鹿児島 ―6.7℃(1923.2.28)    
那覇 6.6℃(1967.1.16)   
(国立天文台編 理科年表より)

★今号の記事一覧
【1】新春の花・プリムラとフリージア
【2】クリスマスローズの購入と管理
【3】洋ランの手入れ
【4】バラの冬季剪定の時期です
【5】季節の手入れポイント

新春の花・プリムラとフリージア 
●プリムラ(サクラソウ科Primula)
冬〜春の定番の鉢物で多くの種類があります。新春に出回るのは、 主に次の3つの系統です。

マラコイデス(P.malacoides)
中国雲南省原産。小輪多花性、花茎が多く立つので、咲き進んだ花茎は早めに基から切り取ります。置き場所は日当たりよく、あまり高温にならないところ。 最近人気になっている雲南サクラソウ(P.filchnerae)も同様に扱えます。
プリムラ・マラコイデス
 
オブコニカ(P.obconica)
中国湖北省原産。比較的大輪で大株に なりボリュームがあります。 プリムラの中では弱い光に耐える性質で、室内の明るい場所でも花が咲き続けます。


 
プリムラ・オブコニカ
 
ポリアンサ(P.×polyantha) 
ヨーロッパ原産の数種の交雑で生まれた園芸品種で、更にコーカサス地方原産のジュリエ(P.julia e)が交配された小型種(園芸名ジュリアン)も生まれています。 鮮明な花色が持ち味で、寒さにも比較的強く、花壇や寄せ植えにも使えます。
  ▲プリムラ・ポリアンサ ▲ジュリアンといわれる小型の系統
<プリムラ管理の基本>
置き場所:強い霜、寒風の当たらない陽だまり。 寒冷地では暖かすぎない室内の窓辺など。
水やり:鉢土が乾きかけてきたらたっぷりと与える。水切れに弱 いので、風の強い時は乾燥に注意します。また、水やりのときに花 や葉に水をかけると、病気(ボトリチス病など)がでやすくなりま す。
肥料:花が咲き続けている間は、緩効性の粒状肥料を月1回か液 肥なら月2、3回。
●フリージア(アヤメ科 Freesia)
南アフリカ原産の冬咲き球根。白色、黄色、桃色など暖かな花色 と優しい花姿、さらに甘い香りがあり人気のある鉢物です。置き場 所は寒風や霜の当たらない陽だまりの軒下など。寒さの厳しい地方 では、最低5℃が保てる室内の窓辺など。水やりは土の表面が白く乾 いてきたらたっぷりと与えます。花が終わったら、葉が枯れるまで、 月に3、4回液肥を与えます。秋に新しい用土で植えなおしますが、 冬に咲かせたい場合は、球根を9月中旬に冷蔵庫(10℃くらい)で 3、4週間冷蔵してから植えつけます。
 
  香りのよいフリージア 
クリスマスローズの購入と管理
最近、日本でもクリスマスローズの育種が進んできて、八重咲き品種や赤 やピンクの鮮やかな品種などが市販されています。1、2年で開花する中苗 なら値段も手ごろですね。
<花付き株を入手したら>
選び方・・・有茎種も無茎種もこの時期に蕾・花がついていなければ、 今年の花は望めません。なるべく蕾の多くついているものを選ぶこ と。クリスマスローズは蕾が小さくても、大体は開花します。

クリスマスローズの芽生え(種類はヘレボルス・ウェシカリウ ス)
置き場所・・・よく日の当たる軒下などの陽だまり。強い風が当 たるところは避けましょう。
 
水やり・・・クリスマスローズは今が生長期なので、水を切らさ ないように注意しましょう。風が強い日は乾きが早いので要注意で す。特に、蕾の上がってきた株は、花が開くのに水が必要ですから、 鉢の土が乾いてきたら、暖かい日の午前中にたっぷり与えます。

肥料・・・緩効性の固形肥料を月に1回一つまみほど、液肥なら 月2、3回程度。庭植えのものには、春と秋に緩効性の固形肥料1、 2回与えればよいでしょう。

植え替え・・・クリスマスローズは根が大きくなる植物です。株 の大きさよりも鉢のほうがやや大きく見えるもの(秋か冬の初めに 植え替えられたもの)はよいのですが、株と鉢のバランスがよい感 じのものは、根詰まりの危険があります。こうしたものは、花が終 わったら、一回り大きな鉢に植え替えます。庭(落葉樹の下の、夏 に半日陰になるところ)やプランターに植えるときは、軽く根をほ ぐします。


<中苗の場合>
ポット植えの苗は、1年で根がポットに回ります。ポットの土を 押してみて、硬い感じなら根詰まりに近くなっているものです。す ぐに、軽く根をほぐして二回りほど大きな鉢に植え替えます。なお、 施肥は、植え替え後、3週間ぐらいしたら始めます。

<種子の発芽>

 春に取りまきしたクリスマスローズの種子がそろそろ発芽する頃ですまか なくても、クリスマスローズは発芽がよいのでこぼれ種が芽生えることがあ りますから、株の周りを調べてみましょう。発芽した苗は本葉2枚で植え替 えます(2号ポットに1本植えか3号ポットに5本植えくらい)。
洋ランの手入れ  
 新春になると、各地で洋ラン展が開かれます。あなたの愛蘭の具合はいか がですか。なかなか、プロの栽培株のようにはいかないものですが、シンビ ジウムやパフィオペディルムなどそろそろ蕾が上がってきてくれるころです。
<花つきの株を入手した場合>
2007年の日本大賞(東京ドームの洋ラン展)に輝いたデンドロビ ウム・ゴールドシュミッティアヌム「コイズミ」
●置き場所 よく日の当たる夜間10℃程度が保てる暖かい場所(暑すぎないように)。暖房の風の直接当たるところは避けます。

●水やり  水やりは鉢の用土が乾いてから2、3日後に(週に1、2回程 度)、室温より少し高めの30度くらいのぬるま湯を湿らす程度与え ます。蕾のある株では暖かい日にシリンジ(噴霧)をしましょう。

●肥料  花の咲いている間は不要。春になって、芽が動いてきてから与えます。

<持ち込み株の管理> 
温室があれば別ですが、あまり温度が保てない場合は高温性のカ トレアやファレノプシスなどは花が咲くのが遅くなります。低温性 のシンビジウムやパフィオペディルム、ノビル系デンドロビウムは 蕾があがってきます。花茎が折れたり曲がったりしないよう、支柱 を立てましょう。また、空気が乾燥しがちですので、シリンジをマ メに行います。
バラの冬季剪定の時期です  
暖冬化が続いているためか、なかなか葉が落ちず、年が明けても花を咲 かせ続けるバラが多くなっているようです。これまでならば、「葉が落ちた 休眠期に冬季剪定をする」といっていたのですが、これからは「時期がきた ら葉が付いていても冬季剪定をする」に変えなければいけないようです。 バラの冬季剪定は1月から2月中に済ませましょう(寒さの厳しい地方で は3月一杯くらい)。
<H・T系・イングリッシュローズの剪定の仕方>
1. まず、枯れ枝、病害虫の被害の残っている枝を元から切り落とす。
2 .鉛筆より細い枝と、逆に太くても軟らかいしまりのない枝、3、4年経 た古い元気のない幹を元から切り落とす。  
3. 内側に伸びている懐枝や込みすぎているところの枝、枝と枝が交差して いるところの枝を整理する。  
4. 幹は、去年の春に伸びた部分を10〜15センチ残して切り詰める。  
5. 切り詰めるときは、外側に付いている丸くて大きな、まだ固く締まって いる芽のところから、7、8ミリ上で株の内側に斜めに切り落とす。すでに 動き出している芽はえらばない。  
6. 幹は、同じ長さに揃えるのではなく、多少段をつけるようにすると、花 が咲いたときにきれいに見える。  イングリッシュローズやオールドローズやフロリバンダ系は、やや幹を 多く、枝を長く残すように剪定するのがポイントです。

<ツルバラ(大輪系)の剪定と誘引の仕方>
1. 枯れ枝や小枝、細枝を切り取り、ツルの先を3、40センチ切り詰める (充実した外芽<外側に向いた芽>の上で切る)。
2. 古いツル(3年め以前の枝)は花を付けにくいので、不要な古いツルは 元からノコギリで切り落とす。古いツルから、元気よく新しい枝が伸びて いる場合は、その新しい枝のところまで切り戻す。
3 .残したツルの小枝は2、3芽残して切り詰める。
4. 残したツルをなるべく水平になるように誘引し、紐で固定する。
ハイブリッドティー キャロリーヌ・ド・モナコ
5. ツルとツルはなるべく交差しないように配置し、ツルの上下の間隔は3 0センチくらい取る。 中・小輪系は、古いツルにもよく花をつけるので、無理に切り取ること はありません。ほかは、大輪系と同じです。

<寒肥を施しましょう>
 バラは肥料を必要とする種類です。バラに寒肥(元肥)を施していない場 合は、なるべく早めに施しましょう。1株当り油粕、骨粉、過燐酸石灰各3 00gを牛糞(15リットルくらい)に混ぜを、株元から4、50センチ離して 溝を掘り土に混ぜ込みます。これはツルバラの場合も、H・T系の場合も同 じです。
季節の手入れポイント

<花壇・ガーデニング>
戸外での作業は特にはありません。空いている花壇があったなら、 天地返ししておきましょう。シャベルなどで花壇を掘りかえし、下 の土を上に出しほぐして空気にさらします。寒さや乾風、日光に当 てることで、春からの病害虫の発生を減らすことができます。 *協会のホームページ・季節の園芸作業に、今年のガーデニング計 画を立てるときに役立つ「国内・国外の種子・苗の通販業者と外国 の園芸の会」の紹介が載っています。ご覧ください。

<花木・庭木>
 針葉樹、落葉果樹・花木の剪定を年内に行えなかった方は、無理 に今月に行うことはありません。厳冬期を避け、2月になってから でよいでしょう。また、冬の薬剤散布(石灰硫黄合剤)や寒肥の時 期です。*協会のホームページ・季節の園芸作業1月号に、冬の薬 剤散布(石灰硫黄合剤)や寒肥の仕方が載っています。ご覧くださ い。

<花鉢物>
 室内に取り入れた寒さに弱い熱帯花木類や草花類の具合はいかが ですか。落葉性の種類は、枝を切り詰めた鉢物は、給水が弱くなっ ていますので水は控えめにします。水やりの基本は、鉢の土が乾い てきてから与えるようにします。また、アブラムシ、カイガラムシ、 ハダニが発生しやすいので注意しましょう。表側だけでなく、定期 的に葉裏や葉の付け根、株元の葉の重なりあっているところをチェ ックします。  新しく購入した鉢物類で花が次々と咲く種類には、追肥と花がら 摘みをおこないましょう。
<家庭菜園・ハーブ>

家庭菜園は休眠の時期。越冬させている種類も少なくなりました ね。ホウレンソウやシュンギクなど、ビニルトンネルやべたがけシ ートをかけて育てているものは、中でアブラムシなどの病虫害が発 生していないか、時々調べてみましょう。また、ビニルトンネルを 利用すれば、ニンジン、コマツナ、カブ、ダイコンなどの種子がま けます。今、種子をまけば、春〜初夏にかけて収穫できます。

日本園芸協会のホームページには役立つ園芸情報をたくさん掲載しています。
毎月の植物の手入れ方法をご紹介する「季節の園芸作業」はこちらから。
http://www.gardening.or.jp/colum/index.html


植物に関するいろいろな情報を満載したサイト「植物博物館」です。
植物を鑑賞したり、図鑑のように調べたり、様々な情報を無料で得ることができます。
http://www.horcul.com/top/


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