日本園芸協会
園芸ファン通信 VOL.89 【3月号】

 今年は例年になく"冬の嵐"が多かったようで、ようやく動き出した芽が痛んだり、冬囲いが飛ばされてしまったところもあったようです。春は比較的高温になるとの予報が出ていますが、あまり極端な陽気にならないといいですね。 そろそろ、草花類の種子まきや春植え球根の植え付けの準備をしておきましょう。


★今号の記事一覧★
【1】【特集】今、多肉植物がひそやかなブーム?!・人気がでてきた多肉植物
【2】シネラリア、シザンサスは花後の切り戻しで2度咲きも・春の花鉢物の管理
【3】春が来た!! ガーデニングがシーズンイン!・草花の種まきと球根の植え付け
【4】季節の手入れポイント・花壇・ガーデニング、庭木・花木、花鉢物・観葉植物、家庭菜園・ハーブ

今、多肉植物がひそかなブーム?!
人気がでてきた多肉植物

 最近、ガーデンセンターや園芸店に行くと、多肉植物売り場が拡大・充実されているのに気が付きます。ユニークな草姿に愛らしい表情で、人気が急上昇しているようです。

<多肉植物とは>

 葉が多肉質になったり、根が肥大して地上に出たりして、観賞価値がある植物が多肉植物。一緒に扱われるサボテン類がサボテン科であるのに、多肉植物はベンケイソウ科(カエランコエ、エケベリア、セダムほか)、ユリ科(ハオルチア、ガステリア、アロエほか)、ツルナ科(メセン、コノフィツムほか)、キク科(セネキオ、オトンナ)、トウダイグサ科(ユーフォルビア、)、キョウチクトウ科(パキポディウム、アデニウムほか)などいろいろな系統があります。それだけ変化があるわけで、株・葉姿が面白いだけでなく、花がきれいなものも多くあるので楽しめます。

▲白い粉の吹いた葉が美しい
エケベリア・セトーサ(青い渚)

 

▲アエオニウム「黒法師」は日に当てると発色がよい

▲ハオルチアは交配種も多い。
写真はスプリング交配「マトリックス」

 

▲半透明の葉(窓植物です)で
マニア注目のハオルチア・オブツーサ。


<多肉植物の特徴>

 温帯〜亜熱帯の乾燥地帯が主な原産地で、日当たりと乾燥を好みます。耐寒性も比較的強く、大部分の種類は強い霜や寒風の当たらない陽だまりの軒下などで越冬できます。寒冷地や寒さに弱い種類は、室内のよく日の当たる窓辺などで管理します。

 多肉植物は、なんとなく春夏の植物と思われることが多いのですが、実際は秋冬が成長期になる種類が多くあります。

春〜秋成長(冬休眠)型
 パキポディウム(キョウチクトウ科)、ユーフォルビア(トウダイグサ科)、セダム(一部)、エケベリア(一部)、カランコエ(以上ベンケイソウ科)、アロエ(大部分の種類、ユリ科)、ハオルチア(ユリ科)、ガステリア(ユリ科)など。
秋〜春成長(夏休眠)型
 エケベリア(一部)、アエオニウム、アドロミクスク、セダム(一部)、センペルビウム(以上ベンケイソウ科)、メセン・コノフィツム類(ツルナ科)、ハオルチア(ユリ科)
春・秋成長(夏・冬休眠)型
 コチレドン(一部)、センペルビウム(一部、ベンケイソウ科)、セネキオ(キク科)

※生育期は水やりし、休眠期は水を控えめないし断水します。それぞれの生育型にあわせて管理することが必要です。


<栽培のポイント>
置き場所
 よく日の当たるところがベストです。形の面白さから室内インテリア的に扱かわれることがありますが、長く室内に置いていると徒長したり軟弱になって枯れてしまうこともあるので注意。遅霜の恐れがなくなったら外に出しましょう。夏は、セダムなどの一部強健種を除いて、やや日陰になる風通りのよい涼しい、雨の当たらないところで管理します(梅雨、秋雨の時期も)。
水やり
 成長期は鉢の土が乾いてきてから1、2日待ってから、たっぷり与えるようにします。もともと、乾燥地帯の植物ですから、多少、水やりが遅れても問題ありません。休眠期は控えめ、ないし断水が基本です
肥料
 そう必要ありません。生育期に月1回ほど液肥を与えればよいでしょう。

<入手のポイント>

 大きな園芸店やガーデンセンターが安心です。通信販売を行っている多肉植物・サボテン専門店を利用してもよいでしょう。店内に長く置かれているものは痛んでいる可能性がありますので(見た目にわからない場合が多い)、なるべく入荷したてのものを選ぶようにします。こうした面からは、雑貨店などでインテリア的に扱われているものは要注意です。良株は、一般的に葉が硬くしまり、節間(葉と葉の間隔)が詰まった株です。

 なお、タペストリーを作って楽しむのならば名札のない大衆品でもでもよいのですが、コレクションを楽しむならば、やはり名札のついている物を選ぶようにしましょう。

シネラリア、シザンサスは花後の切り戻しで2度咲きも
春の花鉢物の管理

 園芸店でも、外で育てられる鉢物が多くなってきましたね。ただ、もともと温室で栽培されたものですから、いきなり外に置くのは避けましょう。特に春先は風の強い日が多いので注意が必要です。晴れた暖かい日は風の当らない日溜りに置き、夜間や風の強い日は、暖房の風が直接当らない室内で保護するのがベストです。これまで、室内で育ててきた鉢も、同様に少しずつ外の空気に慣らしてゆきましょう。

▲シネラリア(サイネリア)は
立ち性のタイプも人気が出ている。

 

▲白系の葉と花がユニークな
エレモフィラ・ニベア


<シネラリア(キク科)>

 本来は宿根草ですが、カナリア諸島原産ですので寒さ暑さに弱く、日本では1年草として扱われていす。葉が大きいので水切れに弱く、特に風が強いとすぐに水切れして葉がしおれます。風の強い日と寒い夜は室内に取り入れましょう。花が終わったら、早めに花茎を根元から葉っぱ3枚ぐらい残して切り戻すと、2番花を伸ばしてくれます。切り戻しと同時に液肥を追肥します(2週間に1回くらい)。


<シザンサス(ナス科)>

 鮮やかな花色と蝶々が群れ飛ぶような花姿で人気がありますが、蒸れと水切れに弱いので要注意。南米のアンデス原産。高温に弱く、気温が25度以上になると弱ります。日当たりで風通しのよいところにおきましょう。また花房が大きくて水切れをおこしやすく、といって腰水にすると、過湿で根腐れを起こしがちです。こまめにチェックして、乾く前に水をやるようにしましょう。花房が咲き終わったら、株元で切り戻すと、次の花房が上がってきます。


<マーガレット(キク科)>

 これも、カナリア諸島原産ですがシネラリアよりは丈夫です。白色のほか、桃色、黄色の品種も普及してきました。寒さには強いほうなので、直接霜に当てないようにすればよいものです。小さいポットに植えられているものは、根詰まりしている場合が多いので、入手したら根鉢を崩さずにひと回り大きな容器に植えなおすとよいでしょう。開花期間中、2週間に1回液肥を追肥します。


<そのほかの鉢物の管理>

 エレモフィラ、ボロニア(ミカン科)、ハーデンベルギア(マメ科)、レシュノルティア(初恋草、クサトベラ科)、ペーパーカスケード(キク科)、エリカ(ツツジ科)などオーストラリア、南アフリカ原産の鉢物は、水のやりすぎに注意。鉢の土が乾きだしてきてから、水やりするようにします。

 クンシラン(ヒガンバナ科)はそろそろ、花芽が上がってくる頃、クジャクサボテン(サボテン科)も花芽が作られる頃ですので、日によく当てるようにしましょう。ともに肥料は不要です。

春が来た!! ガーデニングがシーズンイン
草花の種子まきと球根の植えつけ

 3月に入って、天気もだいぶ落ち着いてきたようです。そろそろ桜の開花が気になりだしますね。そろそろガーデニングもシーズンインです。草花類の種子まきや春植え球根の植付けの時期です。種子や球根などは早めに手配しておきましょう。

 種子まきの目安は低温で発芽するコスモスやアスター、ナスターチウムなどはソメイヨシノが散る頃、もう少し温度が必要なアゲラタムやジニア、ペチュニア類はヤエザクラが咲き始める頃、高温性のサルビアやマリーゴールド、ケイトウ類はヤエザクラが散る頃、アサガオやヒョウタンはさらに10日くらい遅くなります。

 また、草花類・野菜・ハーブのポット苗は遅霜の恐れがなくなったら植えつけられます。春植え球根のダリアやグラジオラス、ゼフィランサスなども同様で、アマリリスは少し遅く、ソメイヨシノが咲き出す頃、熱帯性のカンナやジンジャーはヤエザクラが咲き出す頃を目安にしましょう。

 秋に球根を植えつけられなかった場合は、花の長持ちするスイセンやヒアシンスなどの咲き出した鉢植えを入手して、寄せ植えなどに植え込んでも良いでしょう。この場合は、根鉢を崩さないようにそっと抜き取って植えつけます。


▲小型スイセンの人気種
「ティタティッタ」

 

▲鉢植えのヒアシンスも
庭に植えなおせば来年も花が楽しめる。

季節の手入れポイント
<花壇・ガーデニング>

 3月になると、まだ風は冷たくても日の光が強くなるのがわかりますね。パンジーやビオラ、キンギョソウなどの草花は蕾の上がる数も多くなります。花がら摘みをまめに行いましょう。大きくなりすぎた株では、茎の間引きや伸びすぎた枝の切り戻しをしましょう。肥料が切れると、株の勢いが止まってしまいます。新しく咲く花が小さくなったり、次の蕾が上がるまで間があくようになるのは注意信号です。急ぎのときは、液肥で、余裕のあるときはマグアンプKなどの緩効性固形肥料を追肥しましょう。


<花木・庭木>

 ロウバイやウメ、サンシュユ、ミツマタなど早春咲きの花木類は花が終わったら早めに剪定をしましょう。また、春の植木市がお彼岸中心に開かれます。なるべく早めに出かけて、よい木を入手するようにしましょう。木々の萌芽が始まると、アブラムシなど害虫類が発生し出します。早めに見つけてスミチオン、オルトランなどの殺虫剤を散布します。


<花鉢物・観葉植物>

 マーガレット(白、桃、黄)、マーガレットコスモス、ユーリオプシスデージーは大鉢が多くなっているようです。初恋草、シザンサス、羽衣ジャスミン、ボロニアなども目を引き、チューリップやラナンキュラス、アネモネなどの球根類が春の気分を高めてくれます。ハイドランジア、クレマチス、フクシアなどの促成物も出まわり始めてきました。いずれも温室で大事に育てられた株ですから、並べられてすぐの鉢を選び、購入したら、強い風の当らない日溜りにおき、夜は暖房の風の直接当らない室内に取りこみましょう。


<家庭菜園・ハーブ>

 そろそろ家庭菜園も本格的に稼動を始めます。まずは野菜やハーブ類の種子まき。ホウレンソウ、カブ、コマツナは露地で、ネギ、パセリはトンネルでまきます。パセリは本葉1、2枚で移植します。ハーブでは、ミント類、レモンバーム、タイム類、ロケット、チャービルの種子がまけます。平鉢にまき、風の当らない日溜りで管理します。遅霜の心配があるときは室内や軒下に取りこみます。

 種子まきは苦手という方は、苗から始めましょう。野菜苗は双葉が黄化せずしっかりついているものを選び、遅霜の恐れがなくなってから定植します。

日本園芸協会のホームページには役立つ園芸情報をたくさん掲載しています。
毎月の植物の手入れ方法をご紹介する「季節の園芸作業」はこちらから。
http://www.gardening.or.jp/colum/index.html


植物に関するいろいろな情報を満載したサイト「植物博物館」です。
植物を鑑賞したり、図鑑のように調べたり、様々な情報を無料で得ることができます。
http://www.horcul.com/top/


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