日本園芸協会
園芸ファン通信 VOL.92 【6月号】

 今年は春から台風が来たり、暑い日のあとに、急に寒くなったりと、陽気が安定しませんね。雨も記録的に多かったようで、草花類で徒長してきているものもあるようです。こうした年は病害虫の被害を受けやすいので注意しましょう。


★今号の記事一覧★
【特集1】多花性で夏と秋に咲く新しい鉢物
【特集2】高温多湿に耐える夏の間長く咲いてくれる
【特集3】夏の風物詩!?怖い?面白い!
【特集4】早期発見、早期駆除を心がける
【特集5】季節の手入れポイント

多花性で、夏と秋に咲く新しい花鉢物
シソ科の花鉢物2種

 この時期に出回る花は、熱帯・亜熱帯地方原産の花が多くなります。今回は、ちょっと変わった花形が特徴のシソ科の花鉢物を紹介します。

プレクトランサス
シソ科の半耐寒性宿根草で、日本のヤマハッカと同属です。プレクトランサスには葉が厚い観葉タイプと、花を観賞するタイプがあり、本種は後者で、南アフリカ原産種同士の交配種のようです。

 花後に茎を切り戻し、真夏は半日陰のところで管理すれば、秋に再び開花します(短日性<夜が長くなると蕾ができる>なので、街灯のないところで管理)。水切れしやすいので注意します。冬は明るい室内でやや乾かし気味にします。

スクテラリア
シソ科の半耐寒性常緑低木で原産は中米。学名はScutellaria costaricana。「女王の木」という名前で流通しています。花後に茎を切り戻します。置き場所は夏(半日陰)を除いてよく日に当たるところで、水やりは鉢土が乾いてきたらたっぷりと与え、特に開花中は水切れさせないようにします。

 肥料は春と秋に月1回、マグアンプKなどの緩効性固形肥料を一つまみほど与えます。冬は暖かい室内の日当たりのよいところで越冬させます。

▲プレクトランサスは水切れに注意する

▲夏に直射を当てると葉焼けしやすいスクテラリア

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【特集2】 高温多湿に耐える夏の間長く咲いてくれる

夏向きの草花類
暑い夏に長く咲き続けてくれる貴重な草花類を紹介します。

ニチニチソウ(キョウチクトウ科)
マダガスカル原産の多年草ですが、寒さに弱いので、園芸上は一年草扱いされています。日当たりと乾燥を好み、痩せ地にも耐えます。

 最近は、花が小型のもの、花がスパイラルになるものや、パステル調の花色のものなど品種が多くなりました。肥料は月1回固形肥料を小量施せばよいでしょう。

●ポーチュラカ(スベリヒユ科)
熱帯アメリカ原産といわれる耐暑性の強い宿根草。強健で高温・乾燥に強く、日当たりで元気よく育ってくれます。肥料は月1回固形肥料を小量施せばよいでしょう。

 ただ、寒さには弱いので、秋早めに挿し芽で苗を作って室内で越冬させます。

●インパチエンス(ツリフネソウ科)
小型で日当たりにも耐えるアフリカホウセンカと、大型で半日陰向きのニューギニアインパチエンスがあります。どちらも、水切れに弱いので、注意しましょう。

 アフリカホウセンカは花壇植えもでき、八重咲き品種も出回っています。ニューギニアインパチエンスはやや高温に弱い面がありますので、通風のよい場所に置きます。肥料は8月を除き月1回固形肥料を小量施せばよいでしょう。

▲大輪系ニチニチソウ3種

▲ポーチュラカの吊り鉢。込みすぎた
ところを切り、 それを挿し芽すれば
すぐに発根する。

▲半日陰が適するニューギニア
インパチエンス

▲花壇植えもできるアフリカホウセンカ
(写真は八重咲き品種)

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【特集3】 夏の風物詩!? 怖い? 面白い!

・育てやすい食虫植物
植物なのに、虫を捕らえて栄養源にしている食虫植物。その習性の面白さや変わった姿から、注目される存在です。なぜか夏に近づくと食虫植物の仲間が出回ります。その中でも、入手しやすく、育てやすい種類を紹介します。

<食虫植物栽培のポイント>
食虫植物は湿地原産のものが多いので乾燥は禁物。植え土(ミズゴケ)を乾かさないように注意しましょう。また、サラセニア以外は根が強くないので、肥料は避けたほうが無難です。その代わりに、たまに小さな虫をあたえる程度でよいでしょう。逆に、面白いからといってたくさん与えるのは、禁物、葉(捕虫葉)が早く老化します。病虫害は、ナメクジが付きやすいので,見付け次第捕殺します。

●サラセニア
サラセニア科の宿根草。北アメリカの東部原産。つぼ型の捕虫葉に落ちた虫を消化して栄養にします。ただ、食虫植物の中では根が発達していますので、特に虫を与えなくても育ちます。

 性質は比較的強く、日当たりのよいところで、ミズゴケが乾かないように水やりします。乾きやすい場合は、腰水にしてもよいでしょう。冬、葉が枯れてきたら鉢が凍らない程度のところに取り込み、時々水やりします。

●ハエトリソウ(ディオネア)
モウセンゴケ科の宿根草。北アメリカ東部原産。二枚貝の貝に似た捕虫葉の中心近くにある3対ほどの毛(感覚毛といいます)に虫が2回触れたら、目にも止まらぬスピードで葉を閉じて虫をとりこにするという、驚くべきメカニズムを備えた狩人です。

 性質は比較的強く、日当たりのよいところで(真夏は半日陰)、乾かさないようにし(水やり1日1回ほど)。ただ、滞水を嫌いますので、腰水は避けます。植え替えは早春、新しいできれば太めのミズゴケで植え替えます。冬、葉が枯れてきたら鉢が凍らない程度のところに取り込み、時々水やりします。

●サスマタモウセンゴケ
モウセンゴケ科の宿根草。オーストラリア・ニュージーランド原産。モウセンゴケは葉に粘液を出す腺毛が密生し、この葉に触れた虫を絡めとるタイプです。葉先が二又や三叉になり、日本のモウセンゴケよりも背が高くなります。

性質は比較的強く、日当たりのよいところで、ミズゴケが乾かないように水やりします。乾きやすい場合は、腰水にしてもよいでしょう。冬、葉が枯れてきたら鉢が凍らない程度のところに取り込み、時々水やりします。繁殖は種子ができないので、葉挿しでふやします。

▲壷形の捕虫葉のサラセニア

▲トラップ式の捕虫葉のハエトリソウ

▲サスマタモウセンゴケの葉は鳥もち式

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【特集4】 早期発見、早期駆除を心がける

・病害虫の防除
これから雨が多くなるにつれ庭に出ることも少なくなります。病害虫が発生しても見逃してしまうこともでてきます。病害虫対策は、病気は予防、害虫は早期駆除が原則ですから、心がけましょう。

●ケムシ類
チャドクガが盛りになります。なるべく早めに見つけて、群生しているときに退治しましょう。葉ごと切り取って始末するか、スミチオンなどの殺虫剤を散布します。葉裏の卵の痕や脱皮殻もきれいに整理しましょう。

 サクラやウメ、ハナミズキ、プラタナスなど多くの樹種にアメリカシロヒトリ、ウメケムシなどのケムシ類が、針葉樹でもマツカレハなどのケムシ類が発生します。なるべく発生の初期に発見してスミチオンやディプテレックス乳剤などを散布して退治しましょう。

●カキのヘタムシ
カキの果実が大きくなり始めた初期に落ちてしまうのは、ヘタムシ(カキミガの幼虫)が果実のヘタから侵入して中を食い荒らしたせいです。このヘタムシは5月下旬〜6月と8月の2回発生します。

 対策としては、今の時期に1週間おきに2、3回、スミチオン乳剤かパダン乳剤を散布します。併せてトップジンM水和剤を混合散布すれば炭そ病などの予防もできて効果的です。

●エカキムシ
ナスターチウムやレモンバーム、ペチュニアなどの葉に、絵を描いているかのように白い線が入っているのは、エカキムシ(ハムグリバエ類の幼虫)の被害です。被害のひどい葉は摘み取って処分し、スミチオン乳剤かオルトラン水和剤を1週間おきに2、3回散布するようにしましょう。

 被害が大きい場合は黄色の粘着テープ(ハエ取り紙みたいなもの)を低い位置で設置すると、効果があります。粘着テープの入手についてはお近くの農協に問い合わせて見てください。

●アブラムシ
枝葉が茂ってくると、アブラムシの発生も多くなります。発生したらオルトラン水和剤(鉢物ならば粒剤でよい)やアドマイヤーなどの浸透移行性殺虫剤を散布しましょう。

 効果は2週間続きますので、月に2回散布すれば万全です。

▲チャドクガは集団になっている幼生期に退治する

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季節の手入れポイント

【特集5】 季節の手入れポイント

<花壇・ガーデニング>
今年は入梅が早い地方が多いようです。この時期は庭に出る機会も少なくなります。花壇では、アブラムシやヨトウムシ類などの害虫類、うどんこ病や灰色かび病などの病気が多い時期ですから、雨がやんだときは見回りが欠かせません。

 雨が続きそうで、薬剤をまけないときは、害虫類は手や箸などでつまんで退治し、病気が広がっている葉は摘み取るだけでも、効果があります。

<花木・庭木>
 春に伸び出した芽の勢いが止まる時期で、常緑樹などでは、移植や植付けができます。庭の模様替えを考えられている方は、今月中に行ないましょう。

 キョウチクトウやキンシバイ、アベリア類、ムクゲ、フヨウ、ザクロなど夏咲きの花木は、今年伸びた枝に蕾ができ花を咲かせますので、今の時期に枝先を切るのは禁物です。

<花鉢物>
 春に入手したレケナウルティア(初恋草)、ボロニア、ホワイトツリー、エリカ、クリアンツス、グレビレア、サザンクロス、スカエボラなどオーストラリアや南アフリカ原産の鉢物は、これからが栽培の難しい時期になります。もともと乾燥気味のところの原産ですから、高温多湿を嫌い、長雨に当てると、過湿になって根腐れを起こしがちです。

 これからの雨の多い時期は、軒下などに置き、雨が当たらないようにしてやりまし ょう。

<家庭菜園・ハーブ>
 そろそろ、早めに植えたキュウリやナス、ピーマン、トマトなど果菜類の収穫が始まるころです。ただ、最初の2、3果は熟させずに若もぎしてやると、株の負担を少なくなり、その後の生育が順調で、収穫が多く楽しめるようになります。

 植えつけはニガウリ、オクラ、夏キュウリ(ポット苗)、種子では、エンツァイやモロヘイヤ、ツルムラサキなど暖地性種がまき時です。

咲きだしが薄桃色で美しい桃色ヒメシャラ

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