日本園芸協会

園芸ファン通信 VOL.97 【12月号】

 今年は例年よりも冬の訪れが早いようですね。冬の寒さは、気象庁の予報では総じて平年並みのようですが、多少寒くなることを予想して、寒さに弱い植物は、霜よけなどの保護をちゃんとしておきましょう。


★今号の記事一覧★

【特集1】近年、人気が高くなってきた冬咲き球根
【特集2】クリスマスの花鉢物の手入れ
【特集3】お正月の鉢物
【特集4】季節の手入れポイント

【特集1】近年、人気が高くなってきた冬咲き球根

ラケナリア

 ラケナリアは南アフリカ原産のユリ科(近年はヒアシンス科に分けられることが多い)の球根植物です。種類は多いのですが、園芸品種はあまりなく、原種や原種の選別種が鉢物として出回っています。以前は、花が筒型で大輪のラ・アロイデス、ラケナリア・ヴィリディフロラやラ・ルビフェラなどが鉢物として流通していたのですが、最近は小輪多花性のラ・コンタミナタや葉がビロード質のラ・トリコフィラなども作られるようになり、冬から春の鉢物として人気がでてきているようです。

 球根での販売は少なく、花時に大きな園芸店やガーデンセンターや多肉植物専門店に鉢物が出回るので探してみてください。

●栽培のポイント

 同じ南アフリカ原産のフリージアなどよりは寒さには強く、関東地方南部くらいまでならば、戸外の強い霜に当たらない陽だまりの軒下などで育てられます。寒さが心配な地域では室内の窓辺で管理したほうがよいでしょう。水やりは、鉢の表面が乾いてきてからたっぷりと与えるようにし、花つき鉢の場合は、肥料は与えなくてもよいでしょう。

 春後半になり、葉が枯れはじめたら、水やりを控え、夏は鉢のまま、水を切って管理します。9月になったら、水やりを再開し、マグアンプKなどの緩効性粒状肥料を4、5粒鉢の表面にばらまきます。植替えは2年に1回くらい夏の終わり頃が適期です。

●繁殖

 分球が悪いものが多いので、実生がよいでしょう。特に交配しなくても、花がらを残しておくと種子がとれます。さやが熟して飛散する前に採取し(果実の皮が茶褐色になったら注意)、紙袋に種類ごとに入れて、冷蔵庫の野菜室に秋まで保管します。

 播種時期は10月中旬ごろ。清潔な川砂+ピートモス3割くらいの用土で覆土は種子が見えなくなるくらい。大体2〜3週間で発芽しますので、月2回くらい液肥を与えます。葉が枯れたら水やりをやめます。大体、2年ほどで開花します。

▲大輪筒咲き系
ラケナリア・ブルビフェラ(春咲き)

▲珍しい翡翠色で珍重される
ラケナリア・ビリディフローラ(冬咲き)

▲小輪多花性で清楚な
ラケナリア・コンタミナタ(春咲き)

▲ビロード質で丸葉が特徴のラケナリア・トリコフィラ(冬咲き)

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【特集2】花を長く楽しむために欠かせない

クリスマスの花鉢物の手入れ

 冬の室内を暖かく飾ってくれる鉢物類が盛りになっています。鉢物を購入するときは、なるべく商品の回転の早いお店で、入荷したてのものを選びましょう。お店に長く置いてあったものや、店外の吹きっさらしの場所に置いてあったものなどは、傷んでいることがありますので注意しましょう。

 一度痛むと、回復させるのはなかなか困難です。早めに入手した鉢物はそろそろ液肥を施す時期です。また、咲き終わった花がらは、まめに摘み、株の負担を少なくしてあげましょう。

●シクラメン

 入手して花が咲き進んできたら、葉組みをしましょう。花茎を真中に集め、替わりに大きな葉を外側に持ってきます。そうすると光が中にまで入るようになり、花が途切れなく咲き続けてくれます。枯れた花や黄色くなった葉は、強引に引っ張って抜かず、しおれて抜けるようになってから指で軽くねじって摘み取りましょう。

 夜間温度6、7℃くらいのところがベストです。

●プリムラ類

 オブコニカはシクラメンと同じ葉組みをしましょう。ポリアンサは、葉の裏から花が上がることがありますから、花を真中に集めるようにし、終わった花は先の細いハサミで柄の下のほうから切り取ります。

 また、オブコニカやマラコイデスで花茎が多く上がってきたら、先に咲いた茎から切り取って切花にして楽しむようにすると、次から次に花が咲き続けてくれます。

●クリスマスベゴニア

 春まで長く咲き続けてくれる種類です。花がらをこまめに摘み、液肥を2週間に1回ほど与えます。ベゴニア・エラリオール(リーガースベゴニア)も同様です。ベゴニア類は、高めの温度(夜間温度12、3℃)を好みますので、やや暖かい部屋に置きましょう。

●クリスマスカクタス

 空気が乾燥すると蕾が落ちやすいですから、シリンジをこまめにするか、夜だけポリ袋を頭からかぶせて鉢元を軽く縛っておくとよいでしょう。1季咲きですから肥料は必要ありません。

●ポインセチア

 過湿にすると根が傷み、下葉から枯れてきますので、水やりは鉢土が白く乾いてきて葉が少ししおれかけてきてから与えるようにします。また、水を与えた日の夜は14、5℃が保てる部屋に移すようにします。肥料は必要ありません。

●クリスマスローズ

 この時期に咲くヘレボルス・ニゲル(本来のクリスマスローズ)と、本来は春咲きのヘレボルス・オリエンタリス(レンテンローズ)とその交配種が出回り始めています。耐寒性が強いので、露地で咲かせられますが、鉢が小さくなっているものが多いので、風の強いときは水切れには注意します。

 早めに一回り大きな鉢に植え替えるとよいでしょう。

●洋ラン類

 温室など特別な設備がなくてもシンビジウム、デンドロビウム、エピデンドラムなどを楽しむことができます。蕾つきの株を入手した場合は、花は咲き進むまではよく日に当てるようにします。蕾が全部開いたら場所を移してもよいでしょう。早めに切花にして楽しむようにすると、株の回復が早くなります。

▲今年もフリンジ系の
シクラメンが人気

▲プリムラの中では日陰に強い
プリムラ・オブコニカ

▲ボリュームのある草姿で
人気が出てきた雲南サクラソウ

▲ポインセチアは土の過湿に気をつける

▲洋ランの中では栽培の易しいエピデンドラム(寄せ植え)

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【特集3】和風の鉢物がふさわしい

正月用の鉢物

 お正月にはやはり、和風の鉢物がふさわしいですね。ウメ、ボケ、ハボタン、フクジュソウ、松竹梅や七草の寄せ植え、オモト、センリョウ、マンリョウ、カラタチバナなどなど。名前だけで目出たさ、福々しさが感じられるような気がします。

<入手した鉢の手入れポイント>
  • 置き場所
     よく日が当り、強い風の当らないところ。室内に置く場合は、直接暖房の風が当らないところを選びます。ウメなどで蕾が大きくなっている鉢は、温かい室内に置いておくと正月前に咲いてしまうことがあります。この場合は、やや温度の低いところで管理しておきます。

  • 水やり
     土の表面が乾いてきたら、たっぷりと与えます。

  • 霧吹き
     空気が乾燥している室内に置くと、蕾が落ちたり、うまく蕾が開かない場合がありますが、これは湿度不足。朝晩、霧吹きで軽くスプレーしてやれば、ちゃんと咲いてくれるはずです。

     固い蕾は、ピンセットなどで蕾の先を少し開いてやると、咲きやすくなります。

  • 花後の管理
     花が終わった鉢は、外に出しましょう。マンリョウなどは関東以北では寒がりますので、室内の明るい窓辺などで春まで過ごさせます。また、果実はそのまま付けておくと株が弱りますので、2月になったら摘むようにします。

※注意

 フクジュソウの長い根を切り詰めて、無理やり鉢におさめた寄せ植えに気をつけましょう。根から水が吸えず花が開かないで終わってしまうのです。見た目で見分けるのは、まずできません(ちょっと蕾が元気なくしおれ加減ですが)。

 いつも利用している信用できるお店で求めるようにしましょう。なお、フクジュソウの鉢植えは、春になったら一回り大きな鉢か庭に下ろします。

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【特集4】季節の手入れポイント

<花壇・ガーデニング>
冬花壇の草花の生育はいかがですか。パンジーやビオラ、デージー、ハボタンは耐寒性が強いので、根付いてしまえば多少霜が降りても大丈夫ですが、スイ―トアリッサムやクリサンセマム・ムルチコーレはやや寒さに弱いので、霜よけや風除けを作るか、軒下に移すのが無難です。
球根では、ユリやスイセンが植えられます。

<花木・庭木>
マツ類の“もみ上げ(古葉とり)”は早めに済ませて、正月をきれいな庭で迎えましょう。また、チャボヒバ、イトヒバ、スイリュウヒバなどのヒバ類も庭の格を高めてくれる樹木です。一緒に手入れをすれば、庭がより見事になります。
モミジ・カエデ類の剪定も早めに行いましょう。根の活動が早く樹液の流れが早いので、できたら年内、遅くても1月いっぱいくらいにすませておきたい種類です。太枝を切るときは、枝の根元から切り、切口にはツギロウやトップジンMペーストなどの癒合剤を塗るとよいでしょう。

<花鉢物・観葉植物>
庭を早めに冬支度しなければならないだけに、室内は花鉢物で飾りたいですね。定番のシクラメンにプリムラ類、花期の長いシンビジウムやデンドロビウムなどの洋ラン類、クリスマスに欠かせないポインセチアやクリスマスカクタス(シャコバサボテン)、クリスマスベゴニアなどが豊富に出回っています。良質の株を入手することが、鉢物を長持ちさせる秘訣です。

<家庭菜園・ハーブ>
菜園やハーブガーデンもそろそろ冬支度ですね。
夏秋まきのネギやニンジン、タカナ、カラシナなどの収穫時期です。あまった野菜類は土寄せをすれば、しばらく保てます。また、ホウレンソウやコマツナなどには霜よけをつくってやりましょう。
地上部が枯れてきたハーブ類は株元で切り取り、根元を腐葉土や堆肥でマルチングしておきます。まだ取り入れていない非耐寒性のハーブがあれば、早めに室内やフレームなどに取り入れます。

▲最近、人気のある小株の
バボタンの寄せ植え

▲オモトは強い風をあうと乾燥で
葉先が痛むことがあるので注意。

▲マンリョウは2月になったら
果実を摘むようにする

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