日本園芸協会

園芸ファン通信 VOL.97 【12月号】

 新年、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 この冬は、比較的穏やかにきているようです。予報ではそれほど寒くならないということですが、これからが小寒(5日)、大寒(20日)と寒さの本番の時期になります。油断しないようにしましょう。

 なお、日本各地の最低気温(記録日)を調べました。やはり今月の後半が寒さのピークになっていることが分かります。

地域 気温 地域 気温 地域 気温
旭川 -41.0℃(1902.1.25) 札幌 -23.9℃(1945.1.18) 仙台 -11.7℃(1945.1.26)
新潟 -13.0℃(1942.2.12) 東京 -9.2℃(1876.1.13) 長野 -17.0℃(1934.1.24)
名古屋 -10.3℃(1927.1.24) 大阪 -5.5℃(1981.2.27) 鳥取 -7.4℃(1981.2.26)
高松 -7.7℃(1945.1.28) 福岡 -8.2℃(1919.2.5) 鹿児島 -6.7℃(1923.2.28)
那覇 6.6℃(1967.1.16)
(国立天文台編 理科年表より)

★今号の記事一覧★

【特集1】春の花といえばプリムラ
【特集2】クリスマスローズの購入と管理
【特集3】洋ランの手入れ
【特集4】多肉植物人気上昇中!!
【特集5】季節の手入れポイント

【特集1】春の花といえばプリムラ

 春の代表的な鉢花がプリムラ。この「プリムラ」という名前は、サクラソウ科のサクラソウ属の学名ですが、園芸的には欧米で改良されたサクラソウ属の草花を呼ぶ名前になっています。

<プリムラ類の管理ポイント>

 冬の鉢花の中では寒さには比較的強く、凍らない程度の低温でよく、逆に高温になると株が早く弱ります。日当たりを好むので、暖房のない部屋の日当たりのよい窓辺などに置くと良いでしょう。開花時期が長いので追肥をして肥切れさせないようにします(液肥なら2週間に1回、置き肥なら1、2か月に1回)。

 空気が乾燥していると、ハダニが付きやすいので、殺ダニ剤の散布か葉裏にシリンジ(噴霧)。花殻はこまめに摘み、5分くらい咲き進んだ花茎は切り取って、切花として楽しむようにすると、花茎が次々にあがってきて、長く楽しむことができます。

<プリムラの種類と特徴>
●ポリアンサ(P.×polyanthus)とジュリアン(P.×juliana)

 ヨーロッパ原産のサクラソウの交雑で生まれたポリアンサに、コーカサス原産のジュリアエを交配して作られたのがジュリアン。大輪で花茎がたつのがポリアンサで、小輪で花が地際で花が咲くのがジュリアンだったのですが、改良が進んで見分けにくくなっています。八重咲き(バラ咲き)やパステルカラーの花色も多くなっています。

 夏涼しくすごさせれば、夏越しできます。

●マラコイデス(P.malacoides)とフィルクネラエ(P.filchnerae)

 マラコイデスは多花性で優しい草姿で人気があります。近年出回るようになったフィルクネラエ(雲南サクラソウ)は、より大輪でボリュームのある姿になります。この2種は夏越しが難しいので、毎年種子で更新します。中国原産。

●オブコニカ(P.obconica)

 花が大輪で、プリムラの中では日陰に耐える種類です。寒さには弱いので、室内管理で。夏の暑さには強く、夏越ししやすい種類です。中国原産。

●デンテキューラータ (P.denticulate) とロゼア(P.rosea)

 玉咲きで、開花が進むに連れて花茎が伸びるデンテキューラータと、それよりもやや小型のロゼア。共にヒマラヤ地域原産で耐寒性が強いので外で育てます。本来は宿根草ですが、高山性のため暖地では夏越しは困難。消耗品と考えるのが実際的です。

▲花色の鮮明な
プリムラ・ポリアンサ

▲半八重咲きタイプの
プリムラ・ジュリアン

▲雲南サクラソウの名前で流通している
プリムラ・フィルクネラエ

▲日陰にも耐える
プリムラ・オブコニカ

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【特集2】クリスマスローズの購入と管理

 冬の寒さに負けず、屋外で咲いてくれるクリスマスローズの仲間(キンポウゲ科ヘレボルス属)は貴重な花ですね。最近は、赤や黄色の鮮やかな花色の種類や八重咲き品種も比較的安価で出回るようになってきています。

<花付き株を入手したら>
  • 選び方
    有茎種も無茎種もこの時期に蕾・花がついていなければ、今年の花は望めません。なるべく蕾の多くついているものを選ぶこと。クリスマスローズは蕾が小さくても、大体は開花します。

  • 置き場所
    よく日の当たる軒下などの陽だまり。強い風が当たるところは避けましょう。

  • 水やり
    クリスマスローズは今が生長期なので、水を切らさないように注意しましょう。風が強い日は乾きが早いので要注意です。特に、蕾の上がってきた株は、花が開くのに水が必要ですから、鉢の土が乾いてきたら、暖かい日の午前中にたっぷり与えます。

  • 肥料
    緩効性の固形肥料を月に1回一つまみほど、液肥なら月2、3回程度。庭植えのものには、春と秋に緩効性の固形肥料1、2回与えればよいでしょう。

  • 植え替え
    クリスマスローズは根が大きくなる植物です。株の大きさよりも鉢のほうがやや大きく見えるもの(秋か冬の初めに植え替えられたもの)はよいのですが、株と鉢のバランスがよい感じのものは、根詰まりの危険があります。こうしたものは、花が終わったら、一回り大きな鉢に植え替えます。庭(落葉樹の下の、夏に半日陰になるところ)やプランターに植えるときは、軽く根をほぐします。

<苗の場合>

 ポット植えの苗は、1年で根がポットに回ります。ポットの土を押してみて、硬い感じなら根詰まりに近くなっているものです。すぐに、軽く根をほぐして二回りほど大きな鉢に植え替えます。なお、施肥は、植え替え後、3週間ぐらいしたら始めます。

<各地のクリスマスローズ展>
●クリスマスローズ展(茨城県水戸市・水戸市立植物公園)
1月31日〜2月11日 (連絡先 Tel 029-243-9311)
●第12回クリスマスローズ展(東京都調布市・神代植物公園)
2月10日〜15日 (連絡先 Tel 042-483-2300)
●第7回クリスマスローズの世界展(東京都・池袋サンシャインシティ4F)
2月20日〜22日 (連絡先 Tel 03-3989-3321)
●クリスマスローズ&原種シクラメン展(大阪市鶴見区・咲くやこの花館)
2月27日〜3月1日(連絡先 Tel 06-6912-2005)
●ひめのみちクリスマスローズ展(兵庫県姫路市・姫路市立手柄山温室植物園)
2月28日〜3月26日(連絡先 Tel 079-296-4300)

▲クリスマスローズの名のもとになった
冬咲きのヘレブルス・ニゲラ

▲クリスマスローズのメリクロン苗。
この大きさだと、来年の冬には花が上がってくる
(品種は八重咲きの「ダブルファンタジー」)。

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【特集3】洋ランの手入れ

 年が明けると各地で洋ラン展が開かれます。ご家庭でも、シンビジウムやパフィオペディルムなど蕾が上がってきてくれるころです。あなたの愛蘭の咲き具合はいかがですか。

<花つきの株を入手した場合>
●置き場所

 よく日の当たる夜間10℃程度が保てる暖かい場所(暑すぎないように)。暖房の風の直接当たるところは避けます。

●水やり

 水やりは鉢の用土が乾いてから2、3日後に(週に1、2回程度)、室温より少し高めの30度くらいのぬるま湯を湿らす程度与えます。蕾のある株では暖かい日にシリンジ(噴霧)をしましょう。

●肥料

 花の咲いている間は不要。春になって、芽が動いてきてから与えます。

<持ち込み株の管理>

 温室があれば別ですが、あまり温度が保てない場合は高温性のカトレアやファレノプシスなどは花が咲くのが遅くなります。低温性のシンビジウムやパフィオペディルム、ノビル系デンドロビウムは蕾があがってきます。花茎が折れたり曲がったりしないよう、支柱を立てましょう。また、空気が乾燥しがちですので、シリンジをマメに行います。

▲展示会は洋ラン入手のよいチャンス
(写真は世界らん展日本大賞2008会場にて)

▲優しい色合いのパフィオペディルム・デレナティー。
花付き株が2000円前後で入手できるようになっている。

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【特集4】多肉植物人気上昇中!!

 最近、多肉植物の人気が急上昇しているようで、ガーデンセンターでは多肉植物系統の売り場が拡充しているところが目立っています。多肉植物は、その性質さえ理解してしまえば、栽培管理に草手間がかからないこと、年中、変わらぬ姿が楽しめること(花がきれいな種類もあります)、種類・品種が多く、コレクションの楽しみがあることなど、多肉植物園芸は楽しみの多い分野です。

<入手のポイント>
名前つきのものを選ぶ

 ミニポットで売られているものは名前の付いていないものがあります。こうしたものは寄せ植えやタペストリーなどにはよいのですが、コレクションには不向きです。多肉植物は、葉挿しや株分けで易しくふやせるものが多いですから、多少高くてもちゃんとした名前つきのものを選ぶようにしましょう。

ネット通販で珍品も

 最近は一般的な種類はガーデンセンターなどで入手できるようになっています。品揃えの面では専門店が一番です。インターネットで珍しい種類の苗や種子を販売しているところも多くなっていますので、そういうところを利用するのもよいでしょう。また、多肉植物の趣味の会に入会すると、交換会などで珍品を求めることもできます。外国の種子屋さんを利用すれば、珍しい原種を育てることもできます。

<国内のナーサリーと趣味の会>
山城愛仙園
豊中市原田南1-10-7 Tel 06-6866-1953
URL:http://www.aisenen.com/
奈良多肉植物研究会
奈良市法蓮町1417-23 Tel 0742-27-3266
URL:http://www3.kcn.ne.jp/~sakainss/
国際多肉植物協会(ISIJ)
URL:http://www.ne.jp/asahi/isij/japan/
会費3000円(年間)。詳しくはホームページをご覧ください。
<外国の種子屋さん>
Silverhill Seeds
南アフリカ PO Box 35108, Kenilworth, 7745 Cape Town, South Africa
URL:http:/www.silverhillseeds.co.za
主に南アフリカの野生植物種子の専門店。奇想天外(ウェルウェッティア)、アロエ、ゼラニウム類の原種のほか、バオバブ、原種球根などを扱っています。
Mesa Garden
アメリカ P.o.Box72 Belen, New mexico 87002 USA
URL:http://www.mesagarden.com
サボテン、多肉植物専門の種子屋さん。アメリカ外の種類も多く扱っています。種子の採種地データがあるのもよい。

▲肉植物の寄せ植え
(写真は東京国際フラワーエキスポ2007にて)

▲緑黄に白い粉をふいた
緑黄色の葉が印象的な朧月
(グラプトペタルム・パラグアイエンセ
ベンケイソウ科)

▲アフリカ原産の多肉植物
アロエ・ストリアタ(アロエ科)

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【特集5】季節の手入れポイント

<花壇・ガーデニング>

 戸外での作業は特にはありません。空いている花壇があったなら、天地返しをしておきましょう。シャベルなどで花壇を掘りかえし、下の土を上に出しほぐして空気にさらします。寒さや乾風、日光に当てることで、春からの病害虫の発生を減らすことができます。

<花木・庭木>

 針葉樹、落葉果樹・花木の剪定を年内に行えなかった方は、無理に今月に行うことはありません。厳冬期を避け、2月になってからでよいでしょう。バラの冬の剪定や元肥やりは今月からの作業です。同時に薬剤(一般に石灰硫黄合剤が使われますが、バラには登録がありませんので自己責任で)を散布するとよいでしょう。

<花鉢物>

 室内に取り入れた寒さに弱い熱帯花木類や草花類の具合はいかがですか。落葉性の種類は、枝を切り詰めた鉢物は、給水が弱くなっていますので水は控えめにします。水やりの基本は、鉢の土が乾いてきてから与えるようにします。また、アブラムシ、カイガラムシ、ハダニが発生しやすいので注意しましょう。表側だけでなく、定期的に葉裏や葉の付け根、株元の葉の重なりあっているところをチェックします。

 新しく購入した鉢物類で花が次々と咲く種類には、追肥と花がら摘みをおこないましょう。

<家庭菜園・ハーブ>

 家庭菜園は休眠の時期。越冬させている種類も少なくなりましたね。ホウレンソウやシュンギクなど、ビニルトンネルやべたがけシートをかけて育てているものは、中でアブラムシなどの病虫害が発生していないか、時々調べてみましょう。また、ビニルトンネルを利用すれば、ニンジン、コマツナ、カブ、ダイコンなどの種子がまけます。今、種子をまけば、春〜初夏にかけて収穫できます。

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