春の草花も盛りを過ぎてきたようで、夏に向けた園芸作業の時期になりました。5月は、急に暑くなったり逆に寒くなったり、また強い風が吹いたりと(いわゆるメイストームですね)、天気が不順なことがあります。植物と同時に、お体にもお気を付けくださいませ。
夏は清涼感のある白系統の花がお勧めです。今回は最近人気の出てきた2種類を紹介します。
ヨーロッパ原産の耐寒性宿根草です。ナデシコ科のセンノウの仲間で(学名 Lychnis flos-cuculi)、この仲間では珍しい涼しげな白花の品種です(原種は桃色。草丈がありますから、鉢植えは風の強くないところに置き、花壇なら水はけの良い土質で、盛夏はやや日陰になるところが適します。寒さに強いので、冬も露地で大丈夫です。アブラムシが付いたらオルトラン粒剤を散布します。
涼しげな花姿のリクニス「ホワイト・ロビン」 |
オーストラリア原産のセリ科の半耐寒性多年草でちょっと布地に似た質感の大きな花がポイントです(学名 Actinotus helianthi)。日当たりと風通りのよいところを好みます。夏前に株を半分位切り戻すと、秋にまた良い花を咲かせます。水やりは鉢の土が乾いたらたっぷりと与えます。冬は5℃の保てる室内の窓際。
セリ科としては花が大きいフランネルフラワー |
高温性のアサガオや夏野菜の苗の植付けの時期になりました。苗は、株がしまっており、葉の黄変や縮れていなくて下葉までしっかりついているもの。発芽のときの双葉までしっかりしているものを選びます。水切れさせたり、日に当たっていなかった苗は下葉が落ちています。また、ポット苗は、底穴から根が出始めたときが植え付けのポイントです。すぐ植えつける場合は、そのような苗を選ぶようにしましょう。
根鉢にぎっしり根が回ってしまったものは、軽く外側の根をほぐして植えつけましょう。また、1ポットに何株も植えられているものはボリューム感がありますが、分けて植えると根傷みすることがありますので、1ポット1株でボリュームのあるものがよいでしょう。
なお、植え付けは、ポットの土がやや乾きかけたときに行うと植え痛みが少ないものです。
アサガオ苗は双葉が付いているものが良苗 |
花色が増えたトレニア。 花壇では水切れに弱いので盛夏は注意< |
春早くから咲き出した草類は、種子が稔る時期です。パンジーやビオラなど、花がらを摘んでいたつもりでも、確かめてみると結構種子ができているものです。せっかくですから、種子を採取して、ご自分が稔らせた種子で、苗をつくってみましょう。
ご自分で咲かせた花から種子を採り、翌年の苗を作ることは、ガーデニングの理想の一つのような気がします。改良の進んだ草花類は、採取した種子からだと親と同じ花(色や花径など)が咲くことは少ないのですが、自然風の庭園にはむしろマッチしていることが多くあります(色別にしっかり分けて作る整形花壇庭には市販の種子が向きます)。春花壇を整理するときなど、ついでに種子を採取しましょう。
パンジー・ビオラ、プリムラ類、ワスレナグサ、アリッサム、キンギョソウ、ナスターチウム、クリスマスローズ、シクラメン、ヒアシンス、スイセン、ムスカリなど
莢(さや)が茶褐色になり、カサカサした感じになったらそろそろ採取できる頃です。ためしに、莢をあけ、中の種子が硬くなり色がついてきたら(大体は茶褐色系)OKです。クリスマスローズなど莢がはじけて種子が飛散するものは、網袋などを被せておくか、莢が茶褐色になってきたら、早めに採取します。採取は、莢がはじけないようにそっと莢ごと切り取ります。
採取した種子は、種類、品種・色別に分けて、莢ごと日陰で1週間ほど乾燥させてから、莢を破り、ごみなどを除きます。草花類は種類別、品種・花色別に紙袋に入れてからまとめて、ビニール袋にいれ、まき時期まで冷蔵庫の野菜室で保管します。
クリスマスローズなどの宿根草や球根類は、種子を採取したらすぐにまく(これを「とりまき」といいます)と失敗が少なくなります(ただし、発芽は秋、ないし翌春)。この場合、発芽するまでまき土を乾燥させないように気をつけます。
最近、人気が高いのがベジタブル(野菜)を花壇材料にしたベジタブルガーデン。花壇の楽しみと収穫の楽しみを一緒に味わおうという欲張りなアイデアです。テレビのガーデニング番組でも取り上げられており、ガーデニングショーでのデモンストレーションも盛んです。作り方のポイントは、背の高くなるトウモロコシやトマト、ナスなどを一番奥に、その手前にジャガイモやピーマン、トウガラシ、エダマメなど中位な種類を、最前列はニンジンやカブ、レタスなど背の低いものを配置します。株と株の間には虫除けになるハーブ類(ミント類やラベンダー、チャイブなど)を植えるのがお勧め。また、野菜だけでなく、花のきれいなボリジやチコリ、カモマイル、オレガノ、葉のきれいなフェンネル類やトリカラーセージ、レッドバジルなどハーブ類を適当に混ぜると、カラフルで変化がある花壇が楽しめます。
なお、野菜類は連作(毎年、同じところで、同じ種類を栽培すること)を嫌うものが多いですから、年毎に場所を変えて作るようにします。
京野菜の代表「鹿ケ谷カボチャ」 |
家庭菜園の醍醐味のひとつがトマトやキュウリなどの夏の果菜でね。植え付けはゴールデンウィーク頃(関東南部標準)ですから、そろそろ畑の準備をしておきましょう。 まず予定している畑の土壌の酸度を和らげるため1平方mあたり苦土石灰を100gほど散布して、ついでN:P:Kが5:5:5ほどの化成肥料160gと堆肥を3〜5kg散布し、よく耕して、均しておきます。
遅霜の心配がなくなったら、春野菜の種まきや植え付けをしましょう。ネギ(4月上旬まで)、コマツナ(通年)、ホウレンソウ(5月中旬まで)、リーフレタス(4月下旬まで)、コカブ(5月上旬まで)、スエダマメ(4月下旬から)、イ−トコーン(4月下旬から)、インゲン(4月下旬から)が適期で、ポットまき(室内保温)ならば早めにまくことができます。
苗が少数でよい場合やまき遅れてしまった場合は、ガーデンセンターなどで販売されているポット苗を利用しましょう。チンゲンサイなどで1ポットに数株入っている場合は、ポットの底から根が出てこないものを選んで、早めに分けて移植します。ハーブ苗も同様に植えつけられますが、バジルやレモングラスなど高温性の種類の庭への定植は4月下旬以降まで待ちましょう。
早めに作った春花壇では姿が乱れたり、傷んできたところもあるようです。傷んだ花壇は、早めに整理して夏花壇を作りましょう。パンジーやビオラの掘り取った株は、根元で切り整えて、花瓶やコップなどにさしておけば切花としてしばらく楽しめます。
夏花壇用のデザインは、いかにも夏らしい黄〜橙〜赤系でまとめるか、シャスターデージィーや白色系のペチュニア、葉物のシロタエギクなどを中心にして、涼しさを演出するホワイトガーデンもよいでしょう。サルビア、アフリカンマリーゴールドなど丈の高くなる種類と、ペチュニア、アゲラタムなど背の低い種類を組み合わせて、彩りを考えるのがよいですね。春植え球根のグラジオラスも今月一杯ならば植えられます。
イングリッシュローズやオールドローズを利用したローズガーデンを作られる方が多くなってきているようです。今、入手できるのは、6号位の大鉢に植えられた開花株。ミニチュアならばもっと小さな鉢が出ています。いずれにしても、良株は、葉が切れたりよじれたりしてなく、蕾がすんなり伸びたもの。また、最近はウィーピング仕立てやスタンダード仕立ての鉢も作られていて人気があるようです。庭に植える場合は、花が一通り終わったら、根鉢を崩さないように植えつけます。鉢植えのまま育てる場合も、販売されている鉢は小さめなことが多いので、やはり根鉢を崩さないように一回り大きな鉢に植え替えてやります。
花びらが散ってきたら、花がらを取ります。切る位置は5枚葉を2枚か3枚つけた下。ハイブリッドティーなどで樹高を低くしたい場合は、もう少し下の位置で切ります。花後は病虫害が心配になります。黒点病にはダコニールやサプロール、うどんこ病にはトリフミンなど、アブラムシにはオルトラン、チュウレンジバチやバラゾウムシにはスミチオンやオルトランを散布します。
今年の国際バラとガーデニングショウで発表された イングリッシュローズの最新花 「ヤング・リシダス(Young Lycidas)」 |
色鮮やかなローズガーデン |
花が咲き終わった花木類(ツバキ、シャクナゲ、ツツジ、ボタン、フジなど)や冬〜春咲きの鉢物類(シンビジウム、クンシラン、アマリリスなど)は花がらを摘み、お礼肥えを施しておきましょう。肥料は3要素(チッソ、リン酸、カリ)が等量入ったものか、リン酸が多めのものが無難です。チッソだけの肥料(油粕など)の施用は勧められません。
ツバキ・サザンカは花の咲いた枝を切り詰め、込みすぎた枝を抜きます。また、そろそろチャドクガの発生時期になりますので注意しましょう。早めに見つけて、葉ごと摘み取るかオルトラン、スミチオンなど殺虫剤を散布します。
咲き終わったツツジ類は、刈り込んで形を整えます。グンバイムシとハダニ対策に月1度、殺虫剤を散布するようにしましょう。
鉢物では、シンビジウムでは新芽の整理(1バルブ当り1、2本に)をします。そうすると、1個1個の芽が充実して、花が良く咲くようになります。また、クンシランで根が詰まってきた鉢は株分け・植え替えをしましょう。