春の草花も盛りを過ぎてきたようで、夏に向けた園芸作業の時期になりました。5月は、急に暑くなったり逆に寒くなったり、また強い風が吹いたりと(いわゆるメイストームですね)、天気が不順なことがあります。植物と同時に、お体にもお気を付けくださいませ。
夏は清涼感のある白系統の花がお勧めです。今回は最近人気の出てきた2種類を紹介します。
アンスリウム(Anthurium)はサトイモ科の常緑宿根草。原産は熱帯アメリカ。赤や白の花(仏炎包)の種類が知られていますが、本種は優しい桃色が特徴。花がない時も、つやのある葉が観葉植物として楽しめます。高温多湿を好み、夏は直射日光が当たらない半日陰程度のところ置き、冬は日光の入る明るい窓辺程度のところで6、7℃以上保ちます。水やりは夏は多めで、冬は控えめに。肥料は春から秋の初めまで、液肥(月1回)か緩効性固形肥料(2月に1回)を与えればよいでしょう。
高温多湿に強いアンスリウム |
カラテア(Carathea)はクズウコン科の常緑宿根草。原産は熱帯アメリカとアフリカ。カラテアは葉を楽しむ種類が多いのですが、本種は黄橙色の花も楽しめる品種。開花期間は長く、花のない時期も、葉はややビロードがかった緑に筋が入り楽しめます。水やりは鉢の土が乾いたらたっぷりと与えます。栽培管理は、アンスリウム「ピンクチャンピオン」と同様でよいものです。
葉にも筋模様が入るカラテア |
ヒマワリはキク科の一年草。原産地はメキシコ。本種は、草丈40cmほどで、鉢植えで楽しめる矮性種です。入手したら、すぐに一回り大きな鉢に植替えるのが長持ちさせるポイントで、そのままにしておくと、根詰まりで蕾が開かなかったり、水切れしやすくなります。ただ、ヒマワリは根が弱いので、そっとポットから抜き、根鉢をくずさないように植替えましょう。植替え後3、4日は強い風のあたらない半日陰で養生させ、その後日当たりに出します。そのとき、マグアンプKなどの緩効性の固形肥料をひとつまみほど与えます。
ヒメヒマワリはすぐに鉢替えしたい。 |
高温性のアサガオや夏野菜の苗の植付けの時期になりました。苗は、株がしまっており、葉の黄変や縮れていなくて下葉までしっかりついているもの。発芽のときの双葉までしっかりしているものを選びます。水切れさせたり、日に当たっていなかった苗は下葉が落ちています。また、ポット苗は、底穴から根が出始めたときが植え付けのポイントです。すぐ植えつける場合は、そのような苗を選ぶようにしましょう。根鉢にぎっしり根が回ってしまったものは、軽く外側の根をほぐして植えつけましょう。
また、1ポットに何株も植えられているものはボリューム感がありますが、分けて植えると根傷みすることがありますので、1ポット1株でボリュームのあるものがよいでしょう。なお、植え付けは、ポットの土がやや乾きかけたときに行うと植え痛みが少ないものです。
アサガオ苗は双葉が付いているものが良苗。 |
春早くから咲き出した草類は、種子が稔る時期です。パンジーやビオラなど、花がらを摘んでいたつもりでも、確かめてみると結構種子ができているものです。せっかくですから、種子を採取して、ご自分が稔らせた種子で、苗をつくってみましょう。
ご自分で咲かせた花から種子を採り、翌年の苗を作ることは、ガーデニングの理想の一つのような気がします。改良の進んだ草花類は、採取した種子からだと親と同じ花(色や花径など)が咲くことは少ないのですが、自然風の庭園にはむしろマッチしていることが多くあります(色別にしっかり分けて作る整形花壇庭には市販の種子が向きます)。春花壇を整理するときなど、ついでに種子を採取しましょう。
パンジー・ビオラ、プリムラ類、ワスレナグサ、アリッサム、キンギョソウ、ナスターチウム、クリスマスローズ、シクラメン、ヒアシンス、スイセン、ムスカリなど
莢(さや)が茶褐色になり、カサカサした感じになったらそろそろ採取できる頃です。ためしに、莢をあけ、中の種子が硬くなり色がついてきたら(大体は茶褐色系)OKです。クリスマスローズなど莢がはじけて種子が飛散するものは、網袋などを被せておくか、莢が茶褐色になってきたら、早めに採取します。採取は、莢がはじけないようにそっと莢ごと切り取ります。
採取した種子は、種類、品種・色別に分けて、莢ごと日陰で1週間ほど乾燥させてから、莢を破り、ごみなどを除きます。草花類は種類別、品種・花色別に紙袋に入れてからまとめて、ビニール袋にいれ、まき時期まで冷蔵庫の野菜室で保管します。最近は、専用の種子保管用のビニール袋が市販されていますので、これを利用すると便利です。
クリスマスローズなどの宿根草や球根類は、種子を採取したらすぐにまく(これを「とりまき」といいます)と失敗が少なくなります(ただし、発芽は秋、ないし翌春)。この場合、発芽するまでまき土を乾燥させないように気をつけます。
膨らんできたクリスマスローズの莢。 |
市販の種子保管袋。 種類や採種日が書き入れられるようになっている。 |
ここ1、2年、家庭菜園の人気が高いですね。すぐに使い出したいならラデッシュ(二十日大根)や葉菜類。じっくり作りたいなら、トマトやナス、キュウリなどの果菜類がお勧め。近年注目が高い地方野菜を取りいれるのもよいですね。果菜類の植え付けは気温が安定してきた今頃が適期です。苗が小さかったり、気温が安定していない時は、鉢に仮植えしておきます。
また、ベジタブルガーデンを作る時は、背の高くなるトウモロコシやトマト、ナスなどを一番奥に、その手前にジャガイモやピーマン、トウガラシ、エダマメなど中位な種類を、最前列はニンジンやカブ、レタスなど背の低いものを配置します。株と株の間には虫除けになるハーブ類(ミント類やラベンダー、チャイブなど)を植えるのがお勧め。また、野菜だけでなく、花のきれいなボリジやチコリ、カモマイル、オレガノ、葉のきれいなフェンネル類やトリカラーセージ、レッドバジルなどハーブ類を適当に混ぜると、カラフルで変化がある花壇が楽しめます。
なお、野菜類は連作(毎年、同じところで、同じ種類を栽培すること)を嫌うものが多いですから、年毎に場所を変えて作るようにします。
近年注目の地方野菜2種。 |
右はトウガラシ、左がナス。 |
早めに作った春花壇では姿が乱れたり、傷んできたところもあるようです。傷んだ花壇は、早めに整理して夏花壇を作りましょう。パンジーやビオラの掘り取った株は、根元で切り整えて、花瓶やコップなどにさしておけば切花としてしばらく楽しめます。
夏花壇用のデザインは、いかにも夏らしい黄〜橙〜赤系でまとめるか、シャスターデージィーや白色系のペチュニア、葉物のシロタエギクなどを中心にして、涼しさを演出するホワイトガーデンもよいでしょう。サルビア、アフリカンマリーゴールドなど丈の高くなる種類と、ペチュニア、アゲラタムなど背の低い種類を組み合わせて、彩りを考えるのがよいですね。春植え球根のグラジオラスも今月一杯ならば植えられます。
イングリッシュローズやオールドローズを利用したローズガーデンを作られる方が多くなってきているようです。今、入手できるのは、6号鉢くらいに植えられた開花株。ミニチュアならばもっと小さな鉢が出ています。いずれにしても、良株は、葉が切れたりよじれたりしてなく、蕾がすんなり伸びたもの。また、最近はウィーピング仕立てやスタンダード仕立ての鉢も作られていて人気があるようです。
庭に植える場合は、花が一通り終わったら、根鉢を崩さないように植えつけます。鉢植えのまま育てる場合も、販売されている鉢は小さめなことが多いので、やはり根鉢を崩さないように一回り大きな鉢に植え替えてやります。
花が盛りをすぎたら、花茎を5枚葉を2枚か3枚つけた下で切り取ります。ハイブリッドティーなどで樹高を低くしたい場合は、もう少し下の位置で切るとよいでしょう。花後は病虫害が心配になります。黒点病にはダコニールやサプロール、うどんこ病にはトリフミンなど、アブラムシにはオルトラン、チューレンジバチやバラゾウムシにはスミチオンやオルトランを散布します。
黒赤色のハイブリッドティーローズ |
夏に売り出されるバラの新苗。 |
花が咲き終わった花木類(ツバキ、シャクナゲ、ツツジ、ボタン、フジなど)や冬〜春咲きの鉢物類(シンビジウム、クンシラン、アマリリスなど)は花がらを摘み、お礼肥えを施しておきましょう。肥料は3要素(チッソ、リン酸、カリ)が等量入ったものか、リン酸が多めのものが無難です。チッソだけの肥料(油粕など)の施用は勧められません。
ツバキ・サザンカは花の咲いた枝を切り詰め、込みすぎた枝を抜きます。また、そろそろチャドクガの発生時期になりますので注意しましょう。早めに見つけて、葉ごと摘み取るかオルトラン、スミチオンなど殺虫剤を散布します。
咲き終わったツツジ類は、刈り込んで形を整えます。グンバイムシとハダニ対策に月1度、殺虫剤を散布するようにしましょう。
鉢物では、シンビジウムでは新芽の整理(1バルブ当り1、2本に)をします。そうすると、1個1個の芽が充実して、花が良く咲くようになります。また、クンシランで根が詰まってきた鉢は株分け・植え替えをしましょう。