ボタニカルアートの特徴と見方
ボタニカルアートは、元来は写真が無い時代に図鑑の挿絵として描かれてきた絵画です。それが美術品としても注目され、独自のアートとして発展してきました。
とても細密に描かれる
ボタニカルアートは、写真の代わりに使われていたものなので、植物を正確に、精密に、細密に描くのが特徴です。
非常に写実的に描かれ、多くは鉛筆デッサンに水彩絵具で着色しています。
例えば、次の絵をご覧ください。
第31回大賞受賞作品「ブドウ‘キャンベル・アーリー’」
重弘文子さん(東京都)
美味しそうなブドウの質感が見事ですが、葉にも注目してみましょう。葉脈の一つひとつまで丁寧に描かれています。実の右奥にある葉は裏側を描いてあり、表側との色や質感の違いまで伝わってきます。
また背景には、色を塗っていない鉛筆の線画のデッサンもあり、葉の芽や若い葉なども分かるように描いてあります。
さらに画面の下部には、実がなる前の小さな花まで詳細に描かれています。
年間を通した観察で植物の特徴を再現!
ブドウの花と実は、同じ時期には見られないものです。つまり、一年間を通して植物を観察し、一つの作品を構成しているのです。先に見た「葉の芽」や「実がなる前の花の状態」もそうです。
ただ「絵」としてブドウを描くだけなら、葉の裏は描く必要はありません。しかし、ボタニカルアートではそうした、表から見えない植物の特徴も描きます。これはボタニカルアートが元来は「図鑑の挿絵」だったからです。そのため、ボタニカルアートは、「植物学的な視点」も重要です。
図鑑では、ただ「きれいな花」や「美味しそうな実」だけではなく、茎や葉がどのような形や色や質感をしていて、どのように枝分かれしているのかなども見せる必要があります。 単に「きれいな植物の絵」を描く のではなく、見る人に「この植物の特徴は何か」が分かるように描くことこそ、ボタニカルアートの一番重要なポイントなのです。
力作をご覧ください!
細密に、そして植物の特徴をしっかり観察して描くと同時に、「絵としても美しく」描くのがボタニカルアートです。
一枚描くのにも大変な労力と情熱が必要です。その力作の中でも、最も優れていると審査された、歴代受賞作品のギャラリーを、ぜひご覧ください!。
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