日本園芸協会季節の園芸作業
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庭木の剪定基礎知識

剪定の基礎知識(1) 剪定の目的

 野山にある自然の樹木は何もしなくてもそれぞれ花を咲かせ、実をたわわに付けて美しい形を保ちながら生長して行きます。しかし、庭という限られた環境に植えられた樹木は、そのままでは自由に生育できません。庭木を放任し、手入れを行わないままでいると必ず樹形が崩れ、また大きな枝枯れが生じます。
 正しい剪定によって風通しや日当たりをよくすれば 病害虫の発生も防げますし、花や実のつきもよくなり、結果的に樹形も整います。整姿・剪定の本来の目的は樹形をただ人工的に変形させることではなく、自然の樹木を人工の庭の中で順調に生育させるために絶対に必要な作業です。具体的には、下のような時に剪定すべきです。

●病害虫の予防と駆除
樹木が病害虫に侵された場合、放っておくと全体に及んでしまうので、弱った枝葉を切り取ります。

●開花・結実の促進
よい花、実を得るため、必要外の花芽や枝葉を剪定します。

●生育の促進
剪定によって萌芽力が増し、いっそう生育がよくなります。

●多すぎる枝葉の整理
枝葉が込むと日当たりや風通しが悪くなり、病害虫も発生しやすくなります。

●樹形、樹勢の維持
枯れ枝、徒長枝、弱小枝、ひこばえなどは樹木の形を悪くするばかりか生育の害になるだけで全く無用の枝です。これらを切ることによって、樹形を保ち、樹勢の衰えを防ぎます。

剪定の基礎知識(2) 樹形○自然樹形と人工樹形
■自然樹形 自然の中での樹木はその種類毎に形が定まっています。庭木はその制約上、同じ樹形を保つことは無理ですが、自然樹形を知っておくことは整姿・剪定する上で大切なことです。ここでは自然樹形の分け方を紹介しておきます。
◆針葉樹 マツ、イチイ、ヒノキなど
葉が針状または鱗状の樹で常緑が普通ですが、カラマツのように落葉するものも有ります。

◆幹立ちの樹 モクレン、サクラ、モクセイなど
1本の主幹があり、それから枝を出して樹冠をつくるもの。

◆株立ちの樹 ユキヤナギ、アジサイ、ツツジなど
地際から幹が何本も立ち上がって樹冠を作るもの。

◆つる植物 ブドウ、フジなど
幹やまきひげで支柱に巻き付くもの。
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■人工樹形
 庭木はその性格上、放任したままではよく育ちません。人工樹形は樹木の自然の状態と性質を十分知った上で手を加え、さらに洗練して作られたものです。それぞれ樹木に合った形が有り、その性質を無視しては形は作れません。日本では自然の状態に近い形が多く、西洋では彫刻的な幾何学模様や動物の形をしたトピアリーも盛んです。
人工樹形の数々

剪定の基礎知識(3) 剪定の方法
 庭木を整姿・剪定する目的は上に記述した通りで、種類によってその方法は違いますが、基本的に剪定しなくてはならない枝が有ります。これらはみな樹形をそこね、花や実のつきにくい枝ですので、覚えておく必要が有ります。
枝の種類
  • ヤゴ、ひこばえ
    地際から伸び出した枝
  • 徒長枝
    幹や枝から1本だけ勢いよく伸びている枝
  • 胴吹き枝
    幹の途中から伸び出した小枝
  • ふところ枝
    樹冠の内側の細かい枝
  • 逆枝
    下方に向いているものや他の枝と逆方向に伸びた枝
  • 立ち枝
    主枝からまっすぐ上に伸びた枝
  • 平行枝
    主枝と平行して大体同じ太さで伸びた枝
  • かんぬき枝
    主枝と左右対称に伸びた枝
  • 下がり枝
    下向きに向いている枝
  • 交差枝、からみ枝
    幹や主枝に交差したり、からんだりしている枝

剪定の基礎知識(4) 用語解説
幹、枝、芽
・樹冠:枝や葉の繁っている部分。外郭線を樹冠線と呼び、種によってそれぞれ形に特徴がある。

・幹:木の骨格をなす、根と樹冠を結ぶ太い主要な部分。

・主枝:幹から側方に出る太い枝。玉散らし仕立ての場合、下から一の枝、二の枝、三の枝と呼ぶ。樹形を決める上で重要。

・側枝:主枝から分かれた枝。その年のものを本年枝、前の年に出たものを前年枝、前々年に出たものを三年枝と呼ぶ。

・開花枝:花を咲かせる枝。

・芽:葉芽と花芽がある。葉芽は萌芽して枝となり、木の生長の基となる。 花芽には、蕾となるもの(ウメ、サクラなど)、生長して開花枝となるもの(ボタン、ムクゲなど)、実を付ける結果母枝となるもの(カキ、ブドウなど)がある。

整姿・剪定作業
・枝おろし:大枝を付け根から切り取る。剪定では大掛かりな作業なので慎重に行う。

・枝すかし:込みすぎた枝や徒長枝など不要な枝を元から切る。

・切り戻し:1本の枝を途中から切ること。樹形を作り変える時によく行う。木の種類によって残った枝に養分がどう集まるかを考えて切る。

・刈り込み:樹冠を人工的な形に仕立てる。

・摘芯:伸びすぎる枝を抑えるため、新梢の先端を切りつめる。

・芽摘み:枝や葉に生長する前の芽をかき取る(芽かき)。

・摘花、摘果:大きな花やよい果実を得ることを目的として、蕾や花、果実がまだ小さいうちに摘み取ること。

・誘引:タケや丸太、シュロ縄などを使い、枝を切ることなく向きを変えたり曲げたりして樹形を作る方法。引っ張り、突っ張り、支柱立て、針金掛け、などがある。